2008年09月05日

『ひらめきの導火線』(茂木健一郎著、PHP新書)

本『ひらめきの導火線』―トヨタとノーベル賞(茂木健一郎著、PHP新書)は、元気が出る良い本だ。
 その中で、「すごいチーム」のつくり方
「勝ち組」「負け組」の嘘
を紹介する。

 「勝ち組」「負け組」という表現が使われるようになって久しい。しかし、その背後には勝ち負けの基準が二項対立でしか存在していないように感じられ、あまりに偏狭な考え方に思える。

 生物の多様性についての研究の中に、「ジャンケン型の相互作用」という数理モデルがある。これは、「グーはチョキに勝って、チョキはパーに勝って、パーはグーに勝つ」という相対的な関係を指す。絶対的な「勝ち手」のないジャンケン型状態にあると、生物の多様性は豊かにはぐくまれるという理論である。

 当たり前である。もしもグーがチョキにもパーにも勝つことになったら、世の中にはグーだけが残って、多様性など消えてしまう。生態系の中では絶対的な勝ち負けはなく、ジャンケン型のように三すくみとか、あるいは四すくみ、五すくみというのが本来の姿だ。

 人間でも、AさんがBさんより絶対的にすぐれているということはありえない。ある観点から見ればAさんが秀でているが、別の観点からはBさんのほうがまさるというように、多面的なものである。人間とミミズを比べて人間が「勝ち」かというと、そうではない。地面の中を自由に掘り進む能力では、ミミズは人間よりはるかにすぐれているのだから。

 固定化した価値観のもとに単純な勝ち負けで絶対的な序列を措定する考えは、視野を狭くする。たしかに、自由競争の中では、強い人がどんどん強くなって総取りするケースはままある。それが現代のイデオロギーの一つでもあるだろう。だが、それは「勝ち負けを決めて序列化すること」ではないのだ。
 

次に、終章 日本を新時代へ導くために
から、紹介する。

 日本人の生命哲学をきちんと掘り下げることができさえすれば、いままで日本の習慣として「負」の評価を受けていたことが、新たな光を当てられて輝き出しさえするかもしれない。

(略) 完膚なきまでの敗戦があるかもしれない。しかしそれでいい。

 「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」(空也上人)
 私たちの先人の生命哲学は、そんな事態は、とっくの昔にとらえていた。私たちは、なにもおそれることはない。
 日本の可能性を見きわめること。そして、それを「贈り物」として世界に差し出すこと。その勇気さえあれば、日本の未来はかぎりなく明るい。

ーということで、他にもためになる個所が多い。

 ところで、福田首相の辞任、そして自民党総裁選という流れは、
 福田首相が「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」を実践したと思えてならない。

shige_tamura at 15:07│Comments(0)TrackBack(0)clip!本の紹介 

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