2008年08月28日

『意欲格差』(和田秀樹著、中経出版)

格差和田秀樹氏の書かれた『意欲格差』(中経出版)はとても参考になった。
 僕が日頃から思っていることが書かれていて納得した。
 人間、意欲がなくなったら終わりである。
 所得格差よりも恐ろしいのが、意欲の問題だ。
 本のコピーは、「やる気の衰退が 日本を崩していく」である。
 本の中で、マスコミについて書かれていた。
 まさにその通りと思い、そこのところを中心に記載した。


「マスメディアの責任はかなり大きい」85ページより
 
 テレビは視聴率至上主義だから、世間のあきらめムードを敏感に感じ取って、視聴率のとれないど根性ものを放映しないのかもしれない。
 しかし、世間がメディアを動かす力よりも、メディアが世間を動かす力のほうが圧倒的に強いことは確かだし、その意味では、テレビをはじめとするメディアが国民の意識をコントロールしているといってもいいのではないだろうか。
 それどころか、マスメディアは日本人の価値観を変えてしまうぐらいの力を持っているといっても過言ではないと私は考えているのだ。

 最近はバラエティ番組にしても努力というものが消えてしまった感がある。(中略)昔はお笑いの芸能人たちは作り込んだ芸を見せてきた。
 ところが今はどうだろうか。芸能人たちはバラエティ番組で日常会話をしているだけである。人の発言の揚げ足取りをし、茶化してあざ笑う。明らかに作り込んだ芸とは言えないだろう。

 特に若い人たちはテレビに出る芸能人に憧れをもつことが多い。努力の見えない芸能人たちの日常会話を自分たちの日常に取り入れて共有し、自分たちも芸能人と似たような世界にいるのだ、という幻想を抱いているように思われる。
(中略)だから、努力しないでいい加減な人生を送っているほうがかっこいいと思う若い人が増えているのだ。テレビによる無意識・無自覚の洗脳教育とさえ言ってよいであろう。
 
 二〇〇六年、私はフィンランドに行った。この国はOECDの国際学習到達度調査(PISA)でここしばらく常に一位に近い成績にランキングしていることからもわかるように、子供たちの学力が世界トップクラスである。
(中略)しかし、私が何よりも驚いたのは、フィンランドのテレビにはバラエティ番組がなかったことである。一番人気は討論番組で、二番目がニュース番組、三番目はドキュメンタリー番組だ。親が夕方の六時ごろに帰宅して、そういうテレビ番組を見ながら子供たちと語り合うのである。

 日本では知的レベルが高いはずのアナウンサーと称する人たちがバラエティ番組に出てバカぶりを発揮し、漢字が読めないのをまわりがあざ笑ったりしている。本人は自ら頭の悪さを意図的に見せて笑いをとったりしているのかもしれない。
 フィンランドはもちろん、たいがいの外国では頭が悪いのはかっこ悪いことなのに、日本ではちっともかっこ悪くない。
 
 考えてみれば、学力批判を続けてきたのもメディアである。学歴社会を叩き、勉強ができても意味はないと国民に思い込ませ、高学歴者が尊敬されない文化をつくってきた。しかも、マスメディアで働く人たちの多くは高学歴者なのだから皮肉なものである。
 そういうマスメディアが流してきた情報に踊らされてきた国民の中でも、一番被害を受けてきたのは、社会的階層の下位にいる人たちであり、特にその子どもたちだろう。
(中略)一方、下位層の子どもたちは、学歴や学力を軽視して結局は下位層にとどまっているわけだから、マスコミの言うことを真に受けてきたと見ていいだろう。
 
 マスコミに属する人たちの多くは、受験競争をイメージだけで攻撃し、学齢社会を批判し、(中略)一方で、自分たち自身は高学歴であるがゆえに、自分の子どもの学力を下げないように塾に通わせて一流の中高一貫校や大学に入れている。
(中略)自らの身を安全な場所に置いて、一方では国民の向上心を下げるような情報を流す。その被害を最も強く受けるのは先ほど述べたように、社会的階層の下位にいる人たちとその子どもたちであることは間違いない。
 こういうマスメディアの力によって、格差社会が助長されてきたことは否定できないと思うのだ。


「マスメディアが国民の意欲を削いでいる」

 私が強く疑問に感じているのは、ある社会的な問題に対して批判的に語る場合、それが是正されても、さらにそれが度を超えてしまったり、悪影響が出始めたりした以降も、その問題を批判し続けるというメディアの姿勢についてである。

「勉強ばかりさせると子どもがいびつになる」「詰め込み教育はダメだ」
一つには、メディアが東京に遍在しているということがある。
フィンランドでは学歴の高い人が尊敬され、教師も尊敬されている。

 努力することの大切さや、意欲や希望を持つことの大切さを、特にテレビに影響を受けやすい若い人たちの意識に根付かせ、いい意味でそういう価値観を植えていくことが、いまの時代に強く求められているのではないだろうか。

(金沢工業大学の大学生が、大学に入って勉強する気になった最大の動機は「進路ガイド基礎」というあまり聞いたことのない講義を聴いたからだというのだ。)
 問題はその中身である。簡単に言えば社会の厳しい状況を学生に教えるというものなのだ。
 たとえば、フリーターになると年収がせいぜい一五〇万円で、それが一生続くと、結婚もできなければ老後も危うい生活が待っているといった内容の講義を一年生の初めに受けるのである。
 東京からエコノミストなどを呼んでこうした内容の講義を何度も受けるのだから、学生も現実の厳しさを痛感するに違いない。それが勉強への意欲につながり、就職率の高さに結びついていくということらしい。
 学生にハッパをかけるために危機感を抱かせていると考える人もいるかもしれないが、実際には現実をしっかりと認識させる講義と言えると思う。


shige_tamura at 13:13│Comments(0)TrackBack(0)clip!本の紹介 

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