2008年05月23日

カーブボール(ボブ・ドローギン著 田村源二訳  産経新聞出版)

カーブ
カーブボール‐スパイと、嘘と、戦争を起こしたペテン師」(ボブ・ドローギン著 田村源二訳  産経新聞出版)というすごい本が出版された。
 これは、CIAも間違った情報を上げて、これがイラク戦争の引き金になったというものだ。

 内容は、
『カーブボール』は亡命イラク人のコードネーム。
彼は亡命先のドイツの連邦情報局に「イラクでトレーラー型の移動式生物兵器の開発・製造にかかわった」とのにせ情報を提供する。情報はドイツ連邦情報局から米中央情報局の手に渡り、そこでは疑問符が付けられていたが、ホワイトハウスは確実な情報として捉え戦争に突入する。情報の虚偽が判明したのは開戦後である。


 以下、これはという個所を抜粋した。

 ブッシュはケイに、PDB(大統領日報)をどう思うかと訊いた。
 これはむずかしい問題だった。
 毎朝七時三十分に、CIAの特別報告官がホワイトハウスまたは大統領の他の場所におもむき、価値ある最新情報を伝え、注意・警戒すべき点について説明することになっていた。
 その内容はCIAが前の晩に大人数で作成する。
 PDBはアメリカの全情報機関が収集した情報を総合し、煮詰めたもので、国家最高司令官とその側近たちに知らせる、もっとも重要な秘密なのだ。

 クリントン大統領は、六ページかそこいらの報告書を自分で読んだ方が早いと考え、口頭による報告を避けることが多かった。
 ところがブッシュは人から直接報告を受けるほうが好きで、テネットは毎朝大統領に会いに行く初めてのCIA長官になった。
 
 彼はこれをジョージタウン大学でのスピーチで自慢さえした。
 「アメリカ合衆国大統領は、一週間に六日、つまり毎日、わたしに会います・・・大統領は、わたしというひとりの人間、全情報機関の統括者から情報を得ているのだと、みなさんにはっきりと申し上げることができます」ホワイトハウスのスタッフのなかには、このテネットの見苦しい自慢に苛立ちをおぼえた者もいた。
 
 ケイが大統領との昼食の席でPDBについて指摘した問題点は、長期的な戦略的目標や計画ではなく、短期的な日々の状況変化に焦点を合わせて作成されているという点だった。

 「そのため極秘のCNNのようになってしまいます」とケイは大統領に言った。
 「具体的に説明してくれ」ブッシュは詳しい説明をうながした。
 そこでケイは言った。
 PDBを作成しなければならないということが、CIAや他の情報機関の情報収集の方向を決めてしまうのです。
 その逆ではありません。
 だからシステムが狂ってしまったのです。
 それに、毎朝ジョージ・テネットがPDBに立ち会うということと、たえずホワイトハウスの要請に応えようとする彼の姿勢によって、どうということのない情報まで重要で緊急性があるかのように歪められ、大げさに伝えられてしまうのです。

 「大統領がPDBの何かに関心を示されたら、それに関する情報が毎週伝えられることになります」とケイはブッシュに言った。
 ブッシュはびっくりしたようだった。何かピンときたことがあったのだ。彼はチェイニーのほうを向いて、うなずいた。
 「それでモザンビークのSOB(クソ野郎)の報告がしつこく上がってきたのか」大統領はニヤッと笑った。


 イラク社会の腐敗ぶりについてライスから質問があった。
 イラク全体が闇市場になり、やくざ者が支配するギャング国家になったのは、国連の制裁のせいだということを、ケイは説明した。
 そして、イラクの兵器科学者たちは、開発計画が停滞しているのを認めるのが怖くて、あらゆるレベルで嘘をついていた、ともケイは言った。
 
 「ですから、彼らは宮殿が聞きたがっていることを報告していたわけです」とケイは言った。
 テネットもホワイトハウスで同じことをしていたことになる、とケイはふっと思った。
 CIA長官は疑いがあるということを大統領と議会に認める勇気がなかったのだ、とケイは思った。
 
 なぜ友好国の多くの情報機関までサダムの兵器開発計画について誤った判断を下してしまったのか、とカードが訊いた。
 「だれもが同じ捏造情報を循環させ、それが別の捏造情報の裏付けになると考えてしまったのです」とケイは答えた。

 ケイはイギリス、イスラエルをはじめとする友好国のスパイ機関の問題点を列挙した。
 そして、自分の意見では、情報収集がいちばんうまいのは、たぶん中国ではないかと思います、と言った。
 疑われずに運営できる偽装会社を設立して情報収集にあたる、という彼らのやりかたは実に巧みです。
 「たしかに、あそこは我が国のテクノロジーを盗むのがおそろしくうまいな」ブッシュが声をあげた。

 「何がいけなかったんだね?」とブッシュは訊いた。
 「なぜ我々はこれほどの間違いをおかしてしまったのか?」
 簡単な情報収集技術、基本的分析、CIA上層部の指導力という点で、想像を絶する失敗があったのです、とケイは言った。
 わたしたちイラク調査団が、それを暴露したのです。
 その詳細は極秘ですので、この不祥事を公にすることはしませんでした。

 CIAは戦争前、もっとも憂慮すべきことのひとつとして、<カーブボール>と呼ばれるたったひとりのイラク人情報源に全面的に頼る情報を押し出しました、とケイは大統領に言った。
 ところがCIAは、戦前にその男に直接尋問したことがなかったのです。
 彼自身を入念に審査することも、彼の情報の裏をとることも、まったくしませんでした。
 それなのにコリン・パウエルは国連で<カーブボール>のトラックを強調してしまいました。
 大統領ご自身も、一般教書演説で彼の情報を引用されました。
 大統領が大量破壊兵器を見つけたと発表されたのも、彼の情報によってでした。
 しかし、<カーブボール>は嘘つき、ペテン師、とんでもない情報捏造者だったのです、とケイは言った。
 移動式生物兵器製造施設が存在したことなど、いちどもないのです。
 アメリカ合衆国は蜃気楼を追って戦争をはじめたのです。


 大統領は何の反応も示さなかった。関連質問をすることもなかった。ブッシュはすでに<カーブボール>のことを知っているのだ、とケイは悟った。



shige_tamura at 10:41 │Comments(0)TrackBack(0)clip!本の紹介 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
ランキング一覧

人気blogランキング

人気blogランキングに参加しました。
応援よろしくお願いします。