2008年05月12日

憲法改正は政局の安定しだい

 今年の憲法記念日ほど、憲法改正論議が盛り上がらなかったことはない。
 
 この原因は、参議院で民主党が多数をしめたことで、両院の憲法審査会の設置を反対しているからである。昨年五月、憲法改正国民投票法が成立し、衆参両院に憲法審査会が設置されることが決ってから、すでに一年近くが経過しようとしている。
 本来ならば、衆参両院で憲法改正論議が行われ、それなりに活発な議論が展開されている予定だった。
 
 民主党は、一刻も早く総選挙をやりたがっていて、すべてが政局モードとなっている。そのために、憲法論議を行って党内のバランバラの状況が外に出ることが心配で、いつものように「憲法論議は先送り」ということである。

 今回の憲法改正論議について、政治評論家・花岡信昭氏のメルマガがその辺の事情を詳しく伝えていますので、以下、転載します。


すっかり影が薄くなった憲法改正問題>>
【日経BP社サイト「SAFETY JAPAN」連載コラム「我々の国家はどこに向かっているのか」108回・8日更新】再掲


5月3日の憲法記念日はほとんど世間の関心を呼ばないまま過ぎてしまった。新聞各紙は3日付社説で憲法問題を取り上げ、当日は改憲派、護憲派それぞれが集会を開いたが、これほど「盛り上がらない」憲法記念日は近年では珍しいのではないか。

 「衆参ねじれ」による国政の機能不全がその背景にあるのは言うまでもない。安倍政権当時に成立した国民投票法(日本国憲法の改正手続きに関する法律)では、衆参両院に憲法審査会を設置することになっていたが、完全に棚上げ状態だ。

 3日付主要紙の社説は下記の通りである。

   ・朝日  日本国憲法 現実を変える手段として
   ・毎日  憲法記念日 「ことなかれ」に決別を 生存権の侵害が進んでいる
   ・読売  憲法記念日 論議を休止してはならない
   ・産経  憲法施行61年 不法な暴力座視するな 海賊抑止の国際連携参加を
   ・日経  憲法改正で二院制を抜本的に見直そう
   ・東京  憲法記念日に考える 「なぜ?」を大切に


 護憲派の筆頭といっていい朝日は、世論調査の結果を同時に掲載しているが、それによると、9条改正については、反対が66%で賛成の23%を大きく上回った。憲法全体については、「改正が必要」とする回答が56%、「必要ない」が31%だったという。

 これに対して、独自に改正試案を発表してきた読売が3月に行った世論調査では、不思議な結果が出ている(4月8日付)。改正賛成派が42.5%、反対派が43.1%で、わずかながら反対派が上回ったのだ。

 読売によると、1981年から実施している「憲法世論調査」では、93年以降、一貫して改正派が非改正派を上回っていた。今回は改正派が昨年調査より3.7ポイント減り、一方で非改正派が4.0ポイント増えて、この逆転状況を招いた。読売は「憲法改正に強い意欲を示した安倍前首相の突然の退陣や、ねじれ国会での政治の停滞へのいらだちなどが影響したと見られる」としている。

 日経も5月3日付紙面で世論調査の結果を掲載しているが、それによれば、改正賛成派48%、反対派43%であった。

 こうした調査を比べると、国政の混乱が憲法問題に対する国民の意識にも複雑な影を落としていることが分かる。1年前にはあれほど盛り上がった憲法論議が急速にしぼみ、国民の関心事から離れてしまったため、調査結果の「ズレ」となって表れたのだろう。

☆さまざまな課題が憲法と絡んでいる

 各紙社説はそれぞれの立場を踏まえ、現実の諸問題と絡み合わせて、憲法を論じている。朝日の場合は、「一本調子の改憲論、とりわけ自衛隊を軍にすべきだといった主張が訴求力を失うのは当たり前」とし、「豊かさの中の新貧困」など「従来の憲法論議が想像もしなかった新しい現実が挑戦状を突きつけている」と指摘、国民の権利を定めた基本法である憲法の重みをいま一度かみしめたい、と主張している。

 東京もワーキングプアの問題などを取り上げ、「憲法は政府・公権力の勝手な振る舞いを抑え、私たちの自由と権利を守り幸福を実現する砦」としている。

 毎日も同様にワーキングプアや「消えた年金」、後期高齢者医療制度の実態などを取り上げ、「生存権の侵害に監視を強める地道な努力が必要」とする。

 一方、改憲派の読売は憲法審査会の論議を早期に開始すべきだとし、「これ以上、遅延させては、国会議員としての職務放棄に等しい」と断じている。

 産経は日本のタンカーが海賊に襲われた事例を引き合いに、「普通の国の海軍なら、自国船が海賊に襲撃されたら、自衛権によって不法な暴力を撃退するが、海自はそうした行動を取れない」として、現憲法の不備を指摘する。

 日経は、ねじれ国会の現状を踏まえて、衆院の優越をより明確にするため、衆院の再可決要件を3分の2から過半数に緩和すべきだ、という従来からの主張を重ねて強調した。二院制の見直しを憲法改正の重要な軸にすべきだというもので、参院を100程度の地方代表で構成する院としてはどうかと提案している。いわば、ねじれ国会の実態論から憲法改正の必要性に言及したものといえ、傾聴に値する。


☆民主党には成熟した姿を見せてほしい

 国民投票法では改正の発議を3年間、封印している。その間、国会の論議を深めようという趣旨だが、既に1年を無為に過ごしてしまった。憲法審査会が機能していない現状では、棚上げ状態がさらに続くのは必至だ。福田首相はこの問題にまったく関心を示していない。

 民主党は「論憲」の立場を取っていたはずなのだが、憲法記念日の談話では、「衆院での再可決により、悪法の強行成立を繰り返す現政権・与党の下で、拙速な改憲論議にくみするつもりはない」と憲法論議の先送りを宣言してしまった。

 政権交代可能な2大政党時代の到来を考えれば、憲法審査会での論議開始に応じない民主党の態度はいかがなものか。言うまでもないが、改正の発議は両院の3分の2の賛成が必要だ。その上で国民投票により過半数の賛成を得て、はじめて憲法改正が実現する。現在、与党は衆院で3分の2を維持しているが、衆参両院で3分の2の発議要件を可能にするには、自民、民主両党が憲法問題で同じ土俵に立つ以外にない。

 各紙社説がいみじくも明らかにしたように、国政のさまざまな具体的課題は憲法論議と切り離せない意味合いをはらむ。そこには改憲派も護憲派もない。ねじれによる国政の停滞を克服するための策として、憲法審査会の論議をスタートさせるという発想があってもいい。政権を奪取するとしている民主党にしても、憲法問題で成熟した姿を示すほうが得策であるはずだ。


shige_tamura at 13:24 │Comments(0)TrackBack(0)clip!憲法改正 

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