2008年04月24日

提言・防衛省改革(自民党・防衛省改革小委員会)

提言今朝(4月24日)自由民主党 政務調査会 安全保障調査会・防衛省改革小委員会の「提言・防衛省改革」が発表された。

 今回の自民党の提言は、防衛省、総理官邸から防衛省改革に関する提言が行われるが、それに先立って行われた。
 それだけ、マスコミの注目度も大きい。そこで全文を掲載した。



( はじめに )

 我が国周辺軍事情勢は、冷戦終結、湾岸戦争、9.11テロ事件、北朝鮮の「核実験」など依然厳しい情勢にあり、弾道ミサイルやテロなど新たな脅威への対応が重要となっている。また、国際安全保障環境改善のため、近年の自衛隊の海外派遣の業務も増大し、さらに、災害派遣に対する国民の期待も高まっている。

 こうした状況の下、護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」との衝突、イージスシステムに係る特別防衛秘密流出、テロ対策特措法に基づく給油量取り違えや前事務次官の不祥事などの事案が発生し、これらの再発防止への取り組みが必要となっている。

 そこで、我が党は急きょ、安全保障調査会の下に防衛省改革小委員会(浜田靖一委員長)を設置して、これらへの対応はもとより、防衛庁が「省」となったことから、国家の安全保障政策の確立と国民のための防衛省改革が必要との観点から検討を行うこととなった。

 不祥事事案については、深刻に受け止め、防衛省・自衛隊員としての自覚をしっかりと持って、気の緩みが生じないよう努め、それぞれの責任を明確にし、再度、不祥事が起きないような態勢・管理面の不備を改善する必要がある。また、こうした事案を起こさないためにも、抜本的な防衛省改革が必要との意見の一致を見た。
 
 防衛省改革小委員会は、本年3月から検討を開始し、有識者からのヒヤリングなどを含め11回の会議を行い、提言を取りまとめた。
 
 防衛省改革において最も重要な前提は、我が党の党是でもある憲法改正である。そのためには、新憲法草案(平成17年11月22日発表)にある自衛隊の憲法上の位置付けの明確化、軍事裁判所の設置などの方針に沿った改正を早急に実現することが重要である。
 
 それまでの間は、新たな安全保障環境を踏まえた国防戦略の基本を確立し、安全保障基本法を制定し、国家の安全と自衛隊の位置づけの明確化を図る必要がある。

 本提言は、こうした認識を踏まえて、国家安全保障及び防衛改革についての今後の方向性を示すため、我が党としての考えを取りまとめ、明らかにしたものである。

 なお、本提言については、今後の政府の取り組みをフォローアップし、適切に措置されるように努めるものする。


一、 国家の緊急事態・危機対応
1、国家の安全保障・危機管理体制の強化
・国家安全保障政策の確立のために国家安全保障会議(日本版NSC)を設置する。
・政府として安全保障・危機に対する万全の対応を行うため、内閣官房(安全保障・危機管理担当)の大幅増員を行い、体制を充実、関係省庁、民間を含めた連携の強化を図る。

2、内閣総理大臣の補佐体制の強化
・総理大臣に対する防衛省からの迅速な報告を質量ともに充実させる。そのため、防衛省・自衛隊出身の総理大臣秘書官や自衛官の副官の設置など、安全保障・危機管理問題に関する総理大臣補佐機能の強化を図る。
   
3、有事・緊急事態に対応するための訓練・シミュレーション
・総理をはじめとした関係閣僚が参加する有事・緊急事態に係るシミュレーション訓練を実施する。
・有事・緊急事態に係る政府中央部門における定期的な訓練を推進する。


二、文民統制と防衛省組織の在り方
1、文民統制
・国会によるシビリアン・コントロールを重要視する。
・国会議員の秘密保全に関し、国会法を改正するなどそのルールを確立する。
・文官と自衛官が、防衛大臣をはじめとする「シビリアン」を有機的に補佐できるような体制確立を図る。その際、大臣副官も増員し、その機能を強化する。

2、防衛大臣の補佐体制の強化(防衛参事官制度など)
・防衛参事官制度を廃止し、新たに防衛大臣補佐官を設ける。
補佐官は、現職防衛省職員に限らず民間からも登用する。
(民間からの登用の要件としては、安全保障問題に知見があることなどを求める。)
  
3、防衛省組織の在り方の見直し
・内部部局(文官)と各幕僚監部(制服)の関係の見直しを行う。
・内部部局をUC(制服・文官)混合組織とする。
・運用面における大臣の補佐機能の強化のため、内部部局の運用企画局を廃止し、統合幕僚監部の下、部隊運用に係る機能を統合し、迅速な対応が行い得る体制を確立する。統合幕僚監部には、内部部局からの要員(文官)を配置し、UCの混合組織とする。
・統合幕僚長を組織的・機能的に陸幕長・海幕長・空幕長の上位に位置づけ、陸・海・空幕長が担う業務を統括する。また、統合幕僚長(統合幕僚監部)の下に統合司令部を設置する。
・内閣官房の機能・態勢の強化に併せ、内部部局も、政策分野、特に防衛戦略立案や戦略対話等の機能、情報機能、人事教育施策立案機能を強化するとともに、防衛力整備・調達機能の強化・集約化を図る。

4、防衛会議の活性化
・防衛省として、安全保障戦略を検討・確立する会議とするとともに、省全体として一体的に政策を推進するための会議とし、その活性化を図る。

5、迅速な情報伝達
・平時から「防衛省情報集約オペレーション室」(UC混合組織、24時間体制)を設置し、緊急的な情報を速やかに現場から連絡し、防衛大臣、官邸などに迅速な情報伝達を行う体制を確立する。

6、有事・緊急事態における説明責任(国会対応、広報)
・有事・緊急事態におけるマスコミ・国民に対する正確かつ迅速な情報提供を可能とするための広報体制を確立する。
・米国連邦議会などにおいて行われる軍人による軍事情勢報告、活動報告のように、自衛官の国会における各種委員会における説明を可能とする。
(その際、責任追及をする場ではなく、自衛官としての専門性・経験を活かした専門的説明などを可能とするようなルールを明確にする)


三、その他の必要な施策
1、自信と誇りの持てる防衛省・自衛隊組織の確立
・防衛省・自衛隊の重要性を国民に広くPRする。
・充足率の向上などを図り、運用態勢を強化する。
・自衛官の再就職や年金などの処遇改善に努める。また、給与体系を自衛隊の実情を反映した独自のものとし、転勤の多い勤務実態を配慮して地方勤務手当を見直す。
・自衛官が誇りと名誉を持てるような社会的地位や栄典において、統合幕僚長を認証官として位置付け、現場で苦労の多い曹クラスの自衛官を叙勲の対象者とするなど市民社会における自衛官の位置付け向上に努める。
・国民も親しみのある階級呼称や、また国際的にも通用するような階級構成などへの変更(准将新設を含めた将官階級の見直し、1佐を大佐など)も行う。
・ITや新装備などに対応するための教育訓練を充実する。

2、 意識改革
・防衛省・自衛隊の任務の重要性を認識するとともに一体感を醸成するための教育を充実させる。
・不祥事の防止、秘密保全などの法律遵守及び自殺者の増大などへの対応のためのメンタルヘルスや新しい任務に適応できるようにするなど、各種教育を充実させる。


shige_tamura at 12:48│Comments(2)TrackBack(0)clip!自由民主党 

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この記事へのコメント

1. Posted by ツシマ   2008年04月28日 22:17
賛成。階級呼称は万国共通にするべきです。ついでに海保も自衛隊と共通にしましょう。
2. Posted by ツシマ   2008年05月01日 18:05
自衛隊の階級呼称変更に賛成です。外国では国家警察、沿岸警備隊や国境警備隊でも軍隊式階級呼称を使用するのが普通ですし。海保も自衛隊と同じように大将・大佐・大尉式の共通呼称にするべきでしょう。自衛隊には阪神大震災で助けてもらいましたから、昨今汚職とかいろいろありましたが私は自衛隊に感謝しています。

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