2008年01月31日

松下幸之助の人生と人間観(その1)

金子昨年11月17日・日本論語研究会での講演録「松下幸之助の人生と人間観」(講師・PHP総合研究所主任研究員、金子将史氏)を掲載します。


 こんにちは、金子でございます。
 このような場で、私のような若輩者がお話させて頂くのは恐縮でございます。
 今、ご紹介頂きましたように、私は普段は安全保障の研究をしておりまして、そのご縁で田村先生にも非常にお世話になっております。
 私、松下幸之助が創った松下政経塾の出身でもありますし、また現在おりますPHP総合研究所も松下幸之助が創始したものです。色々な意味で松下幸之助とつながりがあるということで本日こういうお題で話してくれというご依頼だったのだろうと思います。

 PHPには、それこそ生き字引のように松下幸之助のことだったら何でも知ってるっていうような研究員もおりまして、そういう者のほうが適任なんでしょうけれども、私なりの観点で松下幸之助という人がどういう生き方をして、どういう考え方をしていたのかということをお話させて頂ければなと思っております。

 話の取っかかりといたしまして、堺屋太一さんの『日本を創った12人』という本で松下幸之助について書いているものをご紹介したいと思います。その中で堺屋さんは、松下幸之助は「戦後日本の国民的な英雄だった」というような言い方をしています。
 今、田村先生のからもお話がありましたように、日本人の好きな歴史上の人物ですとか、日本人の好きな経営者というようなアンケートをしますと必ず松下幸之助は上位になるわけであります。
 PHPから出している『道をひらく』という著作があるわけですけれども、これ、一九六八年ぐらいに出た本だと思いますが、現在までの累計で四百三十九万部売れてるんですね。ここ数年また毎年十万部近く売れるというようなことでありまして、いまだに国民の間で人気があるし、一定の影響力を与えているんだろうなと思うわけであります。
 
 そういうふうに松下幸之助は、ある一種、国民の中で人気があり国民的英雄というべき存在といわれているわけですけれど、なんで昭和という時代に松下幸之助が国民的英雄といわれるような存在になったのかということを堺屋さんは分析しております。
 まず第一に、後でお話いたしますけれども、非常に貧乏な中から自分の一代限りであの松下電器を創って大きくしたという典型的な立志伝中の人物であることが、一番やっぱり大きいだろうと。
 しかも、高度経済成長という、貧しい中で日本が豊かになっていくプロセスとともに松下電器が大きくなっていったこともありまして、国民が自分の経験と照らして追体験できるような存在でもありました。
 
 それから、二番目が成功の道のりがさわやかであったという言い方をしています。昭和三十年ぐらいに松下幸之助は所得番付で一位になるんですけれども、それまでお金持ちっていうのはだいたい土地を売ってお金持ちになったとかいう一発屋が多く、本当に自分で実業をやって自分の力で一位になったという人がそれまでいなかったわけですね。その後も引き続き、松下幸之助は所得番付で一位になるわけですけども。後ろ暗い所があまりなく、そういう成功をしたということも大きかったと。
 これがそうじゃくて、何か後ろ暗いことをしてお金儲けしたとかいう人であれば、人気は出なかったんだろうと言っております。
 
 三番目に、戦後の日本式経営の体現者だったと。
 いわゆる終身雇用的なものを松下は非常に重視しましたし、あるいは企業っていうのはやっぱり人を大事にしなきゃいけないんだということを非常に強調してもいた。それから、メーカーが自分たちだけ良ければいいっていうことじゃなくて、販売店と共存共栄しながら栄えていくんだというようなビジネスモデルも創ったということで、戦後の日本式経営を体現していた存在でもあったというふうに言えると思います。
 
 そして最後に、これはPHP活動を通じてというところが大きいわけですけども、経営理念なり、その人生観なり、人間観というもの語りかける存在でもあったことが、松下さんを国民的英雄にした要因の一つだろうと堺屋さんは分析しています。
 
 こうした分析については色々評価があると思いますけれども、特に戦後日本という時代において経営者である松下幸之助が日本の戦後をある意味代表する存在になっていった意味を考えることが、我々の非常に最近の過去を知る上でも重要なんじゃないかなというふうに思うわけであります。


shige_tamura at 16:22│Comments(0)TrackBack(0)clip!日本論語研究会 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
ランキング一覧

人気blogランキング

人気blogランキングに参加しました。
応援よろしくお願いします。
月別アーカイブ
最新コメント