2007年07月28日

こんな選挙でいいのか(花岡信昭氏より)

 選挙分析は、仕事柄、できませんので、ここは、政治評論家の花岡信昭氏のメルマガを転用します。
 選挙情勢は、各マスコミが報道しているようなものです。 
 しかし、選挙はあけてみないとわかりません。
 「政界一寸先は闇」
 これからどんなドラマがおこるか。明日はどうなるか?

 以下、花岡氏のメルマガです。

【日経BP社サイト「SAFETY JAPAN」連載コラム「我々の国家はどこに向かっているのか」第69回・26日更新】再掲


その国の政治は国民の身の丈に合ったものにしかならない、と言われる。議会制民主主義において、有権者の審判は厳に尊重されなくてはならない。そのことを承知のうえで、この参院選の異様な姿をどう理解したらいいのか。日本の政治状況は未成熟きわまりないことを改めて認識する必要がありそうだ。

 メディアの事前予測によれば、参院選の情勢は「自公与党、過半数割れ」が確定的となったのだという。情勢を伝える主要各紙の見出しと自民党の獲得議席予想を並べてみよう。自民党議席をより「多め」に見ていると思われる順に見ていく。( )内が自民議席の予測だ。

産経(23日付)「与党 過半数割れ濃厚」 (38〜44〜48)
読売(18日付)「与党 過半数割れも」(40台前半、予想幅はグラフから類推すると34〜49程)
朝日(20日付)「自公、過半数割れも」  (33〜41〜47)
毎日(22日付)「与党、過半数厳しく」  (30〜40)
日経(22日付)「与党、過半数厳しく」  (40台割れも、グラフによれば幅は38〜50程度)
東京(22日付)「与党 過半数割れの公算」(30議席台も、グラフによれば39〜49程度)


 自公与党が参院の過半数を維持するためには64議席必要だ。公明が目標13議席を獲得することを前提とすれば、自民は51議席取らなくてはならない。各紙の予測では、最大でも50議席程度で、過半数ラインには達しない。まして公明の13議席も目減りするだろうと言われているから、自民にとってはいよいよ厳しくなる。

 そこで指摘しておかなくてはならないことが2点。一つは、自民が51議席に達しないことはかねてから予想されており、40台半ば程度で踏みとどまれば、過半数ラインに達する「奥の手」があるということだ。


☆政界再再編のスタートという側面も

 つまり、新党日本や民主党会派からの離脱組、自民系無所属候補の当選、国民新党の出方、民主党からの一本釣りなどによって、過半数ラインとの差を穴埋めできる可能性がある。

 したがって、30日未明に選挙結果が判明し、与党の過半数割れが現実のものとなった場合でも、獲得議席によっては、すさまじい多数派工作が展開されるのは必至だ。その次第では、自民は選挙では負けても与党側の過半数維持に成功するかもしれない。これにどのくらいの時間を要するか。

 仮に国民新党との連携が可能になる場合は、連立の組み替えが伴うわけだから、民主党との間で複雑な攻防戦が展開されよう。これは政局流動化の一歩が始まるという意味合いを込めているものとして要注目だ。

 二つ目は、仮に自民敗北、与党過半数割れとなった場合でも、安倍晋三首相が退陣しない可能性が高まっていることだ。その背景には、参院選は政権選択の選挙ではないというスジ論がある。安倍首相自身も敗北即退陣の言質は与えていないし、そこが「野党が過半数を取れなかったら身を引く」と言明している小沢氏ら民主党幹部とは違うところだ。

 橋本龍太郎氏は9年前の参院選で44議席に終わり、退陣した。それと同じ展開にはならないわけだ。

 「ポスト安倍」の一番手は麻生太郎外相という見方が濃厚だが、麻生氏は15人の小派閥の出身だ。それも旧宏池会が3分割したうちの一つである。旧宏池会系には谷垣禎一氏がいる。「麻生後継」で党内がすんなりとまとまっていく情勢にはない。

 与党過半数割れとなれば、参院選後の政局混迷は計り知れない規模となる。既に与党敗北を見越して株価に影響が出始めた。自民、民主入り乱れた政界再再編のスタートという側面もあり、自民としては安倍体制で党の結束維持を最優先させる必要が出てこよう。

 むろん、安倍首相が政治責任を取るとして退陣表明すれば別だが、首相周辺によれば、安倍首相がそうした対応を取る兆しはまったくないとされる。55年体制時代の派閥全盛期とは違う政治判断が求められているということだろう。


☆年金問題は安倍政権の「失政」ではない

 さて、与党過半数割れ必至の情勢をつくり出したのは、「納付記録5000万件が宙に浮いた年金制度への不信」「閣僚の自殺者まで出した政治とカネの問題」「相次ぐ閣僚の失言」などが主たる要因だろう。

 安倍首相は当初、この選挙を「戦後レジームからの脱却」「安倍政権下での憲法改正」を真正面に掲げて、国家のありようを問う場としたい意向だった。だが、年金問題の噴出などによって、とてもではないがそれどころではなくなった。

 年金問題をはじめとして、政府自民党の対応が後手に回ったり、説明不足であったり、なにやら政権のタガが緩んでしまったかのような印象を強めたのは事実だ。だが、年金問題では、来年3月までに全記録の照合を完了させるなど、打つべき手は打ち出したように思える。

 5000万件問題ははっきり言って、安倍政権の「失政」ではない。現政権が万全の対応を取らなくてはならないという点では責任があるのだが、「悪者」は社会保険庁労使の親方日の丸体質にある。

 憲法、集団的自衛権、日米関係、沖縄米軍基地問題、北朝鮮を巡る6者協議、中東情勢、中国の「毒物」対応、教育再生などなど、取り組むべき内外課題はいったいどこへ行ってしまったのか。いずれも「国家像」に直結する国家的課題である。年金問題で国中が狂奔し、単一イシューに矮小化されようとしている状況は見るに耐えない。

 事務所費問題をやり玉に挙げられた赤城徳彦農水相が吹き出物で顔にガーゼを張って現れたことをことさら取り上げる次元の低さ。暴漢に襲われたというのなら別だが、こんなことで大騒ぎするメディアの本質を問わなくてはなるまい。


☆メディア予測が与える影響

 別の角度からもう一点。冒頭に掲げたように各紙は「与党、過半数割れ」で足並みをそろえた。このことによる「アナウンスメント効果」は生じないのかどうか。つまり、ここまでメディア側がはっきりと予測を打ち出したことで、逆の結果が出る可能性だ。

 かつては「アナウンスメント効果」によってメディアの予測がひっくり返ったこともある。それが最近は、こういう流れだということになると、それに合わせる「追い炊き効果」とでもいうべき傾向が顕著に表れる。ポピュリズム(大衆迎合)と紙一重の体質である。

 選挙情勢をそうした観点から見つめていくのも、日本政治の現実を考えていく上で意味があることと思われる。


【その後の各紙予想を加えると下記の通り】
・産経(23日付)「与党 過半数割れ濃厚」 (38〜44〜48)
   (26日付)「自民、41議席前後も」

・読売(18日付)「与党 過半数割れも」 (40台前半、予想幅はグラフから類推すると34〜49程度)
   (26日付)「自公 逆風止まらず」  (自民、40議席下回る可能性も)

・朝日(20日付)「自公、過半数割れも」  (33〜41〜47)
   (27日付)「民主、勢いを維持 自民40議席割れも」 (31〜38〜45)

・毎日(22日付)「与党、過半数厳しく」  (30〜40)
   (27日付)「民主リード拡大」

・日経(22日付)「与党、過半数厳しく」  (40台割れも、グラフによれば幅は38〜50程度)

・東京(22日付)「与党 過半数割れの公算」(30議席台も、グラフによれば39〜49程度)


shige_tamura at 10:17│Comments(0)TrackBack(0)clip!

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
ランキング一覧

人気blogランキング

人気blogランキングに参加しました。
応援よろしくお願いします。
月別アーカイブ
最新コメント