2014年11月

2014年11月13日

解散・総選挙、消費税は? 野党協力は?

安倍政権と安保法制
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 今朝の新聞の注目記事は、毎日新聞一面の「消費税10%先送り」「17年4月軸に調整」「首相方針 景気停滞続き」。

 記事は、「首相は先送り方針を踏まえ、来週にも衆院解散・年内総選挙に踏み切る調整に入っている」(古本陽荘)というもの。

 選挙の最大の争点は、経済で、なぜ今増税を見送ったか?となろう。


 国会、野党の対応は

 国会は来週中に衆院解散の流れになったのを受けて、野党はエボラ出血熱への対策を強化する感染症法改正案や危険ドラッグ規制を強化する薬事法改正案など、国民生活への影響が大きい「人道的・社会的」な法案に関しては協力する―との考えを
川端民主党国対委員長が佐藤自民党国対委員長に、野党方針として伝えた。

 これは、それ以外の法案には協力しないということだ。


 自民党本部の会議は

 自民党本部の今朝の会合も出席者が以前よりも少なくなった。
 ある議員は「次はどうなるかわからないから発言します。00000」といったのもあった。

 朝の会議に来たある秘書に、僕が「ここにいていいの?」と聞くと
「地元の準備はちゃんとやっているから」とのことであった。

 流石、選挙に強い議員の対応は違う。


 今回共産党は、全区擁立へ

 共産党は12日、衆院選に向け全295小選挙区で独自候補を原則として擁立する方針を明らかにした。
 2009年衆院選では候補者を約半数の152選挙区に絞り、民主党の勝利の後押しをしていたが。


 維新、民主連携できるか?

 民主党の福山政調会長と維新の片山国会議員団政調会長は、衆院選での協力を視野に社会保障や地方分権などで共通政策を模索する考えで一致。枝野幹事長と松野代表代行(維新)も野党間の連携を協議した。

 一方、橋下共同代表は、労組会排除を掲げ、労組をバックとする民主党を従来から批判していた関係から、民主党の選挙協力に関し

「僕は反対だ。維新の党の国会議員がどう考えるかわからないが、僕はそれはできない。野党が選挙区調整ばかりで右往左往している」と改めて否定した。


 維新、公明に対抗馬擁立へ

 橋下氏は、公明党現職がいる大阪府と兵庫県の6小選挙区に維新の対抗馬を擁立する方針を示した。焦点は、橋本氏が出馬するかだ。


 以上、政局は解散・総選挙にむけて一気に走りだした。

shige_tamura at 11:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!自由民主党 

2014年11月12日

政局の流れは解散・総選挙へ

安倍政権と安保法制
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 今日から真面目にブログを書くことにする。

 読売新聞が最初に火をつけた格好の解散・総選挙への流れは、今朝の「首相、来月総選挙決断」(産経新聞)など各紙の報道で大きな確かな流れとなった。

 昨日の自民党本部の会議から、各国会議員がそわそわしだし、話題が選挙に関するものが多くなった。

 今朝の会議でも、某議員が僕に「今回も出ますのでよろしくお願いします」との挨拶があった。 

 今回の総選挙、安倍総理が「今しかない!」と決断した?ことからだ。

 争点は、経済。

 アベノミクス効果(デフレ脱却と経済再生を優先させる)を止めるか否かである。
そのために、平成27年10月の消費税10%への再引き上げを延期するか否かだ。
 
 もしも、自民党が増税して選挙で戦えば、野党はこれに対する批判だけすれば選挙は優位となる。
 過去において、自民党が選挙で敗北した時の理由は、「増税」した時だ。
 どうしても「増税」=「悪税」という構図を払しょくするのが難しい。

 国民の多くも、将来を考えて増税もやむなしと考えていても、どうしても目先の問題に影響されてしまうのが世の常だ。


 昨日発売の『文芸春秋12月号』は、「安倍ブレーンが本気で憂う アベノミクスは 消費税10パーセント このままでは崩壊する 浜田宏一 本田悦朗」で、

「増税は国際公約」は財務官僚の作文だ。消費に冷や水を掛ければ、デフレに逆戻りする」との内容だ。

 増税して、さらに景気が悪化し、減収になれば、税収増も望めないというわけだ。

 この対談は無視できない。


 次に、選挙を戦う上で重要なことは「一致団結」することで、自民党は現在、安倍総裁、谷垣幹事長の体制でまとまっている。

 野党は、それぞれ党内問題を抱えている。例えば、みんなの党は渡辺前代表が、昨日の党代議士会で、浅尾代表に対し「野党共闘では党が埋没し、衆院選の比例議席はゼロになる。今のうちに責任を取って辞任すべきだ」と要求。浅尾代表は拒否した
ーと報道されている。

 また、野党第一党の民主党は、小選挙区の立候補予定者の目標を150とのことだ。

 昨日、大阪のジャーナリストが来たが、橋下人気に陰りが出ていて、テレビも以前ほど大きく報道しなくなっているとのことだ。


 来週以降、安倍総理は、消費税10%への再引き上げについての決断を国民に説明し、さらに「地球儀を俯瞰する外交」「積極的平和主義」、「地方創生」「女性が輝く社会」などの政策について国民に信を問うことになるようだ。

shige_tamura at 09:24|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!自由民主党 

2014年11月10日

日中首脳会談を読み解く(遠藤誉氏)

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 本日10日、日本時間の午後1時前から北京の人民大会堂で、安倍首相は中国の習近平国家主席と会談した。

 どの国の首脳に対しても振りまく溢れんばかりの習近平国家主席の笑顔は、安倍首相との握手の場面では全くなかったことが印象的だった。

 その一方で、ニコリともせず、安倍首相の挨拶にも答えなかった習近平国家主席に対して、安倍首相が柔らかな表情を変えなかったのは「ならぬ堪忍、するが堪忍」の精神で乗り越えたのであろうことが見て取れる。


 苦しい首脳会談ではあったろうが、少なくとも「偶発的な衝突を防ぐ海上連絡メカニズムの具体的作業に入ることを確認した」のは高く評価できる。早く実行してほしい。


 安倍首相は会談後、「戦略的互恵関係の原点に立ち戻る第一歩になった」「アジアの国々だけでなく、多くの国々が日中両国の首脳間の対話を期待していた。期待に応える形で、関係改善に向けて第一歩をしるすことができた」などと語り、会談の意義を強調した。

 歴史認識に関して安倍首相は「平和国家」としての歩みを崩すことはないとしたようだ。

 しかし中国は安倍首相の「言動不一致」をひたすら宣伝してきており、今回の会談はあくまでも「日本の強い要望に応じて開催したものだ」と報道し、習近平が決して「親日的なわけではない」ことをアピールしている。

 したがって今回の首脳会談が、果たして安倍首相が期待するように戦略的互恵関係の原点に立ち戻る第一歩になり得るのか否かは、これからの課題だ。

 会談前に日中合意文書を交わさせたことは、ある意味「条件付き会談」を意味しており、中国の対日政策が変わるということは、あまり期待できまい。

 ロシアのプーチン大統領とは、いつもハグせんばかりににこやかに握手し終始笑顔を絶やさずに会談する習近平国家主席は、今回もプーチン大統領と来年の「反ファシスト戦勝70周年記念祭典」を再確認している。これは「反ファシスト戦争陣営」であった「連合国側」に、「中国」がいて、「中国はアメリカとともに日本と戦った」ということを、アメリカに対して発信したい中国の狙いがある。

 日米同盟があるアメリカを困らせ、アメリカのアジアでのプレゼンスを落していくのが目的だ。

 まもなく経済的に世界一になるであろう中国は、アメリカに対して「新型大国関係」を打ち出しながらも、一方ではアメリカの(軍事的)アジア回帰を牽制している。

 実際は第二次世界大戦のときに、「中華人民共和国」はまだ誕生しておらず、日本と戦ったのは「中華民国」だったのだが、「中華民国」の国民党軍を中国共産党軍が倒して、戦後、4年後の1949年10月に「中華人民共和国」が誕生したことは、その計算の中にはない。

 だから中国は、アメリカとは、かつての「連合国」としての「同盟国だった」ことを強調したいのである。


 米中首脳会談で「サプライズ」があると、中国の報道はくり返しているが、こういった流れの中でしか、中国が日中首脳会談を位置づけてないことは、中国が早くから決めていた戦略で、その戦略を日本がどのように乗り越えていくのか、安倍首相の力量が期待される。


 なお最後に一つだけ注意を喚起したい。

 中国共産党は中国を経済発展させることによって一党支配の正当性を中国人民に納得させている。日中経済交流は中国経済の発展を助け、その結果、中国共産党の一党支配体制持続に貢献しているのだという側面を見落としてはならない。

 それがいいのか否かは読者の判断にゆだねる。

 中国共産党の一党支配体制が長く続いて中国がますます繁栄し、その結果日本が脅威を感じたとしても、取り敢えずは目先の経済交流によって日本が潤うことが重要だと思う人もいるだろう。

 しかし少なくとも香港の民主選挙を叫ぶ抗議デモが成功しなかったのは、香港経済が中国に依存し過ぎているために、中国中央の意思に従うしかない状態を招いているからだ。チャイナ・マネーは民主を買う力を持っているのである。


遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
(ヤフーより)


日中合意文書原文と中国の解釈(遠藤誉氏)

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 昨日、本コラムで「日中合意文書――習近平の戦略を読み解く」を公開したところ、筆者が合意文書原文を読んでないために事実を歪曲しているという批判記事を某中国研究者が公開した。そのために日本のメディア全体が歪んでいると。そこで原文とその直後に発表された中国の解釈をご紹介する。

◆合意文書関連部分の原文と、直後に中国が発表した解釈

 まず筆者が扱った釣魚島(尖閣諸島)に関する部分の中国語原文は、合意文書3の前半にある「双方認識到囲繞釣魚島等東海海域近年来出現的緊張局勢存在不同主張、」である。

 これを日本語に訳すと、「双方は釣魚島など東シナ海をめぐって近年来出現している緊張した局面に関して異なる主張が存在していることを認識し、」となる。

 この合意文書を公開した直後の2014年11月7日21:54:00に、中国共産党の機関紙「人民日報」の電子版「人民網」(網:ネット)の記者が、「専門家」を取材したとして、「中日首次明確存釣魚島争端(中日は初めて釣魚島に紛争があることを明確にした)」という記事を

「網易」や「捜狐」など、多くのウェブサイトに同じ内容で載せている。

 専門家の一人である、中国政府のシンクタンク中国社会科学院日本学研究所の高洪副所長は次のように述べている。

「四つの共識(コンセンサス)(合意)の中で最も重要なのは、中日両国は釣魚島と東シナ海において主権に関する紛争があることを初めて文字化して表現したことであり、双方が異なる意見があることを強調したことは何よりも非常に重要である」と。

 この情報は翌日11月8日、「人民日報」の1面と3面にも載り、特に3面では「ついに文字化した」ことが重要だとくり返している。

 11月8日の朝刊では、「人民日報」だけでなく、「環球時報」や「新京報」など、ほとんどの新聞のトップページにも大きく扱われ、特に「人民日報」系列の「環球時報」には「中日明確釣魚島不同主張(中日は釣魚島に関して異なる意見があることを明確にした)」と、ほぼ前日の「人民網」の記者が取材して書いた内容を踏襲しながら、同じ内容の記事を一斉に発信した。

 これは言うまでもなく、中国政府の新華通信社が全国一斉に「通稿」(これで掲載しなさいという中国政府からの指令原稿)が発出されたことを意味する。つまり、これは中国共産党と中国人民政府の意思なのである。

 原文と「中国の解釈」は違うのである。そこが重要だ。

 筆者は合意文書の原文を、中国語と日本語の両方で一文字残さず読んだ。

 その直後の出された「中国の解釈」に驚き、「日本はしてやられた」と思ったのである。

 しかしこの中国研究者は、筆者が原文を読まずに情報を歪んで伝えたと激しく名指しで非難しているので、非難はまったく自由だが、まさに「歪んだ見解が広がる」ことを回避するために、ここに敢えて筆者が記事を書いた経緯を述べた次第だ。


◆米議会調査局(CRS)リポートに照準を当てている中国

 米議会調査局(CRS)(Congressional Research Service)は2012年9月と2013年1月に、同じタイトルの“Senkaku(Diaoyu/Diaoyutai) Islands Dispute”というリポートを出した。日本語で書けば「尖閣諸島(釣魚島/釣魚台)紛争」ということになる。Diaoyuは中国大陸における尖閣諸島の呼称である「釣魚島」の中国語による発音で、Diaoyutaiは台湾における尖閣諸島の呼称である「釣魚台」の発音である。

 このCRSリポートに書いてある主たる内容は、昨日のコラムに書いたように「アメリカ政府はニクソン政権以来、尖閣諸島の領有権に関しては係争関係者のどちらの側にも立たないと宣言してきた」というものである。

 CRSリポートが公開されると中国のネットは燃え上がり、国営テレビの中央テレビ局CCTVは、繰り返しこのCRSリポートの特集番組を組み、「アメリカは釣魚島の領有権が日本にあるとは言っていない」と言い換えて連日放映した。

 2回目のCRSリポートが公開された5カ月後の2013年6月に習近平国家主席とオバマ大統領が首脳会談を行って、オバマはこのCRSリポートに書いてある文章を読み上げるように「アメリカは尖閣諸島の領有権に関しては、どちらの側にも立たない」と宣言したのだ。

 ここには明らかな米中タイアップがあったという印象さえ世界に与えた。

 この流れの中での中国による尖閣諸島の領空領海侵犯と今般の日中合意文書であり、それ故に合意文書公開後、間髪を入れずに「人民網」の記者が「専門家」に習近平の「本当は言いたいこと」を語らせ、中国人民に「中国の外交勝利」を見せつけるに至っているのである。

 合意文書作成のときは日中互いに激しい主張があり、互いに妥協できる表現で落ち着かせたのだろうが、その直後に中国は「中国独自の解釈」を披露して「勝利宣言」をしたという経緯なのである。

 日本はしてやられたという印象を筆者が持ったのは、いけないのだろうか?

 筆者は中国の、これらの一連の動きから「習近平の思惑」を書いただけであって、因果関係が逆だ。

 日本におられるその某中国研究者は、筆者が昨日のような分析を書いたので、日本のメディアが歪んだことを書き始めたと力説なさっておられるが、それは日本のメディアにも失礼だろう。

 日本の各メディアはそれぞれ独特の視点で、独自の取材を必死にしながら記事を書いているはずである。筆者の真似など、どの日本のメディアもしていない。

 批難は自由だし、理不尽な非難をされることには慣れているので、そのこと自体は気にしない。筆者は中国で生まれ育って革命戦争を経験し、家族を中国共産党軍の食糧封鎖による餓死で失い、自らも中国共産党が発した流れ弾に当たって生涯苦しんできた。餓死体が敷き詰められた地面で野宿した経験もある。だから、人生の残り時間を使って、命がけで中国の実態を、できるだけ客観的にお伝えしているつもりだ。

 中国がどういう動きをしているかという実態を知らないと、日本が政策を誤り、日本国民が不幸になることを憂うだけなのである。

 ご理解頂けることを期待する。


遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
(ヤフーより)


日中合意文書――習近平の戦略を読み解く(遠藤誉氏)

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 11月7日、日中合意文書が出された。最も注目すべきは「尖閣諸島に関して日中に異なる主張がある」ことを文字化したことだ。これは「領土問題は存在する」という米中の主張を中国が日本に認めさせたのに等しい。習近平の戦略を追う。

◆11月8日の「人民日報」、高らかに勝利宣言

 尖閣諸島が日本の領土であることに疑いの余地はなく、そのため日本は「領土問題は存在しない」と主張してきた。

 一方、日米安全保障条約により尖閣諸島を安全保障の対象とするとしてきたアメリカは、ニクソン政権以来、「尖閣諸島の施政権は日本にあるが、領有権に関しては、アメリカは紛争関係者のどちらの側にも立たない」と明言してきた。沖縄返還の際のことである。

 これは「中華民国」の代わりに「中華人民共和国」を「中国」という国家として国連加盟させることに関して、アメリカの台湾に対するリップサービスのようなものだったのだが、中国は国連に加盟するや、アメリカの台湾に対するリップサービスまでをも、台湾から引き継いで、自国(中華人民共和国)のものとしている。

 習近平が国家主席になったあとの2013年6月、アメリカのカリフォルニアでオバマ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談が開催されたが、このときオバマは習近平との共同記者会見で「アメリカはニクソン政権以来、尖閣諸島の領有権に関しては、どちらの側にも立たないと宣言してきた」と力強い顔で断言した。

 中国はニクソン宣言以来、アメリカのこの立場を利用して、戦略的言動を続けてきている。

 まず1972年の日中国交正常化では「ここでは尖閣諸島の問題を取り上げない」と時の周恩来首相が会談中「口頭で」言明し、78年の日中平和友好条約締結のために訪日したトウ小平は、「棚上げ」という言葉を用いて領有権論争を回避した。

 このときまだ国力の弱かった中国は「韜光養晦」(とう・こう・よう・かい)(タオ・グヮン・ヤン・ホイ)(力のない間は闇に潜んで力を養え)という戦略に基づいて行動していたのだ。

 ところが1991年12月に旧ソ連が崩壊すると、中国は「もう日本の役割は終わった」とばかりに、翌年の92年に「領海法」を制定し、尖閣諸島を中国の領土に入れてしまった。このとき日本政府が徹底して抗議すべきであったのに、それをしなかったために、中国は尖閣諸島を含めた東シナ海や南シナ海などにある島嶼領海を中国の領土として固定化。いわゆる「中国の赤い舌」を自国のものとして「法的に」取りこんでしまったのである。

 日本は72年のときも78年の時も、そしてこの92年の時も「尖閣は日本の領土である」という主張をするチャンスを逃したまま、こんにちに到っている。

 中国はGDPが日本を凌駕した2010年以降、尖閣諸島の領有権に対して強く主張し始め、日本が尖閣諸島を「国有化」したことを、現状(棚上げ)を変更させたとして激しく抗議し始めた。本当は現状を変更させたのは中国の方で、それまで中国の領土と定義されていなかった尖閣諸島(釣魚島)を、「領海法」で中国の領土と変更してしまったのだから、「棚上げ論」を破ったのは中国だった。だというのに、日本はそれを黙認したに等しい。

 中国が強気に出始めた2010年以降、日本の一部では「棚上げと言った覚えはない」とか「領有権に関していかなる問題も存在しない」といった主張が強まっていったのだが、それを覆させるために中国政府は尖閣周辺の日本の領海領空を侵犯し始めたのである。

 それは「領有権問題は存在することを日本に認めさせる」ための戦略であった。

 そのため、11月8日の中国共産党の機関紙「人民日報」は第3面で、「初めて文字で明確にした」と勝利宣言をしたわけだ。

 これまで「ここでは取り上げない」とか「棚上げにしよう」といった言葉は、一部の議事録には残っていても、日中両国が交わした文書の中には残っていないので、「言った、言わない」の論議があったが、「ついに文書で残したぞ!」というのが、中国の勝利宣言の意味合いなのである。

◆本来なら、アメリカを説得すべきだった日本

 尖閣諸島が日本の領土であることは、歴史的にも国際法的にも疑いのない事実なので、ニクソン政権が「尖閣諸島の領有権に関しては、係争関係者のどちらの側にも立たない」と宣言したことに対して、本来なら日本がアメリカを説得すべきであった。

 筆者はこのときのニクソン大統領や大統領補佐官であったキッシンジャー等の機密文書や蒋介石直筆の日記を調査すべく、アメリカ公文書館やスタンフォード大学のフーバー研究所に潜んでいる資料を徹底して洗い出し、『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(第6章および第7章)(WAC)に詳述した。そして日本政府やメディアに対して、根気よく(しつこく?)「同盟国であるアメリカをこそ説得すべきだ」と主張し続けたのだが、この重要性に気づいてくれるメディアは、そう多くはなく、日本政府もアメリカを説得する勇気を持っていなかったようだ。

 結果、日本は「中国から突き付けられる形」で、アメリカの主張する「尖閣諸島の領有権に関しては紛争(dispute)がある」ことを認めたことになる。

 今般の日中合意文書は、結果的に「中国と日本の間に領有権に関する主張の違いがあることを認識した」ということを意味しているのである。

 だから日本語では「合意」という言葉を使っているが、中国語では「共識(コンセンサス)」という言葉を用い、「ともに、この相違を認識した」という表現にしている。

 おまけに中国側は何度も「日本のたび重なる希望により」合意に達したこと、それを前提として「日本が忠実にこの合意に従い、中国に対して誠意を示し続けること」を前提条件として、日中首脳会談を開催するという条件を突き付けてきた。

 そんなに頼むのなら、仕方ないので開催してやるよ、その代わり条件を守れよ、という姿勢なのである。

 これを「日本外交の勝利」と位置付けていいのだろうか?

 日中首脳会談を何としても実現させたかったのは、アジア回帰をしたいオバマである。その要求を実現するために、日本は涙ぐましいまでの外交努力をしてきたわけだが、安倍首相をギリギリまでじらせた習近平は、「うまくいった」と、ほくそ笑んでいることだろう。

 これまでの尖閣諸島周辺の領空領海侵犯は、まずは「領有権問題があること」を日本に認めさせたかったからであり、今般の日中合意文書により、ついに「文字化」に成功したのだから。

 中国は中米首脳会談を特別に大きく扱い、「サプライズ」があるとしているが、中国の戦略はまだまだ続く。


遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
(ヤフーより)


2014年11月05日

自民党の「小笠原諸島周辺海域等における中国漁船のサンゴ密漁に対する厳正な対処と厳重な抗議を求める決議

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 本日(11月5日)、自民党の外交部会・国土交通部会・水産部会・国防部会合同会議で、以下の決議が行われました。


 小笠原諸島周辺海域等における中国漁船のサンゴ密漁に対する厳正な対処と厳重な抗議を求める決議

                           平成26年11月5日
                              自由民主党
                          外交部会・国土交通部会
                           水産部会・国防部会


 本年9月中旬以降、小笠原諸島周辺海域でサンゴの密漁が目的とみられる多数の中国漁船が確認されており、3日時点で205隻を視認するとともに、5名の乗組員を逮捕した。海上保安庁等の関係当局による懸命な取り締まりや度重なる中国政府への抗議にもかかわらず、中国漁船は増加の一途を辿っており、さらには伊豆諸島周辺海域にも出没したことが確認されている。


 世界自然遺産にも登録された美しき島々と宝の海において、日本人はサンゴをはじめ貴重な資源を父祖の代から受け継ぎ、大切に育んできた。しかし、中国漁船が白昼堂々、我が国の領海及び排他的経済水域内に土足で立ち入り、小笠原の漁業関係者に危険と感じる操業を余儀なくさせるとともに、荒々しい漁法で根こそぎサンゴを奪い取る蛮行を繰り返していることに、我々は激しい憤りを禁じ得ない。


 当該海域から違法操業の中国漁船を一刻も早く一掃するためにも、一層実効性のある政府の対応が急務である。海上保安庁、水産庁、警察庁等の関係当局の船舶・人員の増派及び徹底的な検挙、罰則及び担保金制度の強化、より高いレベルでの中国政府に対する抗議や働きかけ、生態系への影響調査等、関係当局が緊密に連携の上、政府の総力を挙げて厳正な対処と厳重な抗議を行うことを要望する。

 また、恒常的な領域警備の観点においても、小笠原諸島周辺の警戒監視体制の脆弱性は従来から指摘されているところであり、取り締まり体制を増強するとともに、大型船舶が入港可能な港湾の整備や飛行場の設置、レーダーの配備、十分な人員の常駐等、海上保安庁・水産庁・警察・自衛隊の基盤の整備並びに装備の充実を促進し、万全な警戒監視体制を構築することを政府に求めるものである。

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日中首脳会談――今はそれどころではない習近平(遠藤誉氏)

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 今月10日と11日に北京で開催されるAPEC(太平洋経済協力会議)首脳会談で日中首脳会談が実現するか否かが日本では注目されている。

 何らかの形で会見くらいはするだろうが、しかし習近平主席、今はそれどころではない。香港問題や空気汚染で各国から非難されるのを恐れ、その対策に必死だ。反スパイ法の緊急制定もその一つ。

 国内問題だけでなく、外交に関しては北朝鮮とロシアに重点を置いているため、関係するアメリカとの会談を重視し、中国の中央テレビ局CCTVでは、連日のように米中首脳会談に力点を置いて報道している。


◆「反スパイ法」制定の狙い

 今年11月1日、「中華人民共和国反スパイ(間諜)法」が全人代(全国人民代表大会)常務委員会で可決され、当日習近平が署名して施行されることとなった。

 一般に年末の全人代代常務委員会で可決されても、翌年3月に開催される全人代まで待って、そこで議決されたのちに施行されるものだが、今般は施行を急いだ。

 なぜなら中国は香港で9月末から展開されている行政長官の民主選挙を叫ぶ抗議デモを、海外の反共勢力が煽動していると見ているからだ。

 中国政府の通信社である新華通信社の電子版「新華網」(網はネット)は、西側諸国に存在する非政府組織の存在を列挙し、かつノルウェーのオスロで「占中(オキュパイ・セントラル)」手法で香港のデモを展開する手法を2013年1月に決め特殊訓練を行ってきたとさえ明言している。

 したがって今般の「反スパイ法」制定により廃棄された国家安全法(1993年)と最も異なる個所は、「外国スパイと中国国内の組織または個人が連携する」という項目が加わり、強調されたことである。

 いま中国政府は他の香港市民を動員して、「反占中」「反抗議デモ」のための署名活動を大々的に展開し、昨日の段階で180万人以上の署名を集めることに成功したと発表。その数値を書いた横断幕を毎日CCTVで報道し、ついに香港市民の4分の1以上が「占中」に反対するに至っていると宣伝している。ともかくAPEC開催中に民主的な選挙などを求める運動が中国大陸上で起きないように最大限警戒しているのである。

 そうなる前に、いざとなったら「反スパイ法」により香港の抗議デモ参加者を逮捕できる準備をしていると言える。そのために「四中全会」(第18回中国共産党大会・第四次中央委員会全体会議)で「依法治国」(法によって国を治める)をスローガンとして議決したわけだ。そんなギリギリの綱渡りをしている真っ最中なのである。


◆大規模軍事演習と反テロ法案の草案発布

 もう一つ、習近平が綱渡りをしていることがある。

 それは第18回党大会開催の時もそうだったが、中国で何か大きな行事があって、外国人の記者が大勢集まる時を狙って、ウイグル族などの抗議運動やテロが起きる。それを警戒する目的もあり、先月(10月)25日、中国東北部の「瀋陽戦区」で「聯合行動―2014E」と称する大規模軍事演習が行われた。中国人民解放軍の総参謀部の指示のもとで「瀋陽軍区」が組織・実施しているのだが、これを「軍区」と言わずに「戦区」と称しているところにカギがある。

 習近平が中央軍事委員会主席として就任以来唱えている「いつでも戦争を遂行でき、必ず戦争に勝利できる軍を目指せ」という言葉に沿った軍事力強化を目的としたもので、約2万人が参加し、「陸空合同作戦行動」を実施したのである。全て実物の標的を用いて火力攻撃演習を行っている。武装警察も参加していることから、北朝鮮に対する威嚇だけでなく、国内におけるテロ事件への対応も考慮に入れていることが見えてくる。

 この軍事演習は本日、11月4日に閉幕したが、11月1日に閉幕した全人代は同時に「中華人民共和国・反テロ主義法」の草案を可決し、公布した。社会に対して意見を求めるとして、全人大のウェブサイト(www.npc.gov.cn)に全文を載せている。意見の提出期限は2014年12月3日だそうだ。

 このように緊迫した国内事情にあるので、今朝ほど(2014/11/4 10:26)本コラム(第31回)で密漁船に関して書いたような、「背後に中国政府の陽動作戦」的な要素など、あろうはずもないのである。

 今は日本に関して関心が薄いとさえ言える。

 だから拙論のコメントにもあったが、中国は「法治国家」ではなく「放置国家」とも言える状況にあり、そのように非難されても仕方がない。


◆日中首脳会談開催の可能性

 そうは言っても、日中首脳会談開催の可能性が低いかというと、必ずしもそうではない。それは王毅(おうき)外相の発言にすべてが表れている。彼は10月29日に、APECにおける日中首脳会談実現の可能性に関する質問に対して、次のように述べている。

 「中国は主催国だ。中国には訪問者はすべて客だとみなす習慣がある。中国はすべての来客に関して、地元の人間としての務めを果たす」

 そして王毅外相は「日本の指導者が、問題の存在を正視し、問題を解決する誠意を示すべきだ」と付け加えた。

 それならわれわれも「日本の」の部分を「中国の」に置き換えた言葉を、中国に対して言わねばならない。

 安倍首相は是非とも毅然として「問題の存在を正視するよう」中国側に言って欲しいものである。


遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
(ヤフーより)

2014年11月04日

赤珊瑚密漁船増殖の背後に密売組織――携帯で映像を送って海上で価格交渉(遠藤誉 氏)

 小笠原諸島周辺に押し寄せてくる中国漁船の数の増え方が尋常でないため、背後に中国政府の思惑があり日本の海上保安能力を偵察するのが目的とする憶測があるが、それは当たらないと思う。

 なぜなら、宇宙探察まで可能となっている現在の発達したITのさまざまな技術を駆使すれば、このような原始的な犯罪行為をするまでもないからだ。

 仮に偵察が目的であるなら、日本で拿捕の対象とならない「通過するだけ」という手段を取れば済むこと。密漁者が偽装船製造のために3000万円もの投資をする必要もない。

 ましてやAPECの首脳会談が北京で開催されようとしている今、このような犯罪行為を世界にさらし、わざわざ日本に有利な「カード」を与え、APECの場で中国を不利な状況に追い込むような手段を、中国自らがわざわざ取る理由はないからだ。時期が悪すぎる。

 それなら、密漁船増殖の背後には何があるのか?

◆携帯で映像を送って海上で価格交渉

 筆者は80年代初頭から留学生の教育と受け入れ業務に携わってきたため、福建省には何度も足を運び、偽造書類の発祥地と蛇頭(スネークヘッド)の現状を調査に行ったことがある。 

 80年代半ばから90年代半ばにかけて日本では「出稼ぎ就学生」という中国人就学生の問題が社会現象となったことを、ご記憶の方も少なくないだろう。

 あのころ「偽造書類と言えば福建」、「福建からの留学生(&就学生)と言えば、まず偽造書類を疑え」というのは現場の常識だった。 なぜ福建省が偽造書類の発祥地になったのかに関しては拙著『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』に書いてある。なぜなら習近平は、まさに偽造書類全盛時代に福建省を統治していたからだ。1985年から、厦門(アモイ)、寧徳、福州と異動しながら最後には福建省の副書記となり、2002年に浙江省の書記となった。

 その浙江省にも何度も調査に行っているので、福建省と浙江省の地勢と商人根性に関しては一応心得ているつもりだ。蛇頭にも接触した経験がある。

 そこでこのたびの赤珊瑚密漁船急増に関して福建省と浙江省にいる信頼できる知人を通し、背後で何が動いているのかを独自に取材した。

 その結果分かったのは、密漁船の背後には一定程度まとまった「偽装船製造」をそそのかすマフィアがあり、さらに日本の領海で密漁した赤珊瑚を「海上で!」密売する密売組織ができ上がりつつあるということである。

 手法はこうだ。

●マフィアは漁師に「おいしい仕事がある」と誘いをかける。

●密漁船は実際には地方政府に登録されていない船を仲介し、それを購入して偽装改装させる。中には登録されている船名船号(登録番号)もあるが、その場合は持ち主が登録の際に複数、「三無船舶(船名船号・船舶証明書・船籍港名が無い)」を製造しておき、それを高い値段で転売するというやり方がある。
 だから同じ船名船号の船が複数あることになる。中国ではほぼ常識となっている車の「ナンバープレート」転売(密売)と同じ方法だ。
 密売者の車のトランクには数十個のナンバープレートが隠されていたなどというケースはざらで、中国の中央テレビ局CCTVでは、その事件現場と犯人逮捕の瞬間などをよく放映している。

●さて、偽装船購入と改装のための資金の一部は、このマフィアが仲介し、高い利子を付けて、赤珊瑚密売が成功したあとに戻してもらう仕組みになっている。改装の専門業者もいて、それもマフィアが手配する。

●いよいよ赤珊瑚密漁に成功すると、捕獲した珊瑚の画像を携帯で撮り、日本の領海内から、領海ギリギリ周辺で待機している密売船に画像を送り、価格交渉をする。日本の領海を出た場所から携帯で発信すると、中国当局に信号をキャッチされるため、この辺りは綱渡りのような技術が必要となる。
 そのために密売組織から、予め中国大陸のではない携帯を預かるそうだ。また密売船が日本領海内に入っている場合もある。だから日本の海上保安庁が拿捕した時には、密漁船の中にはすでに赤珊瑚はないという状況もある。

●密売組織の構成メンバーは大陸の者ではなく、台湾などの、中国大陸では探知しにくい(登録されていない)携帯を所有している者が多い。
 赤珊瑚を積んだまま帰港すると、その場で逮捕されてしまい、しかも必ず懲役刑が待っているので、空っぽの状態で帰港する。

●密売組織のメンバーは福建から台湾に渡った中国人もいれば、台湾人であることもある。また必ずしも台湾ばかりとは限らないと、福建および浙江省の知人は語っている。

●価格交渉がうまく行かず、赤珊瑚を出航した港に持ち帰った者は、あちこちに赤珊瑚を隠しておくのだが、その場合はほとんど見つかって逮捕されている。10月末からは当局に密告した者には賞金が出るようになったので、安全に金を稼ぐ方法としては、漁民はこちらを選ぶだろうと取材対象者は言っている。

 以上が主たるプロセスだ。


◆蛇頭は再登場しているのか?
 80年台から90年台にかけて活躍した蛇頭(スネークヘッド)は、1992年に中韓国交正常化が成され、在中国の朝鮮族が韓国に出稼ぎに行くケースが増えると、北上して偽造書類の多発地帯は吉林省に移った。

 しかし習近平政権になってから「ぜいたく禁止令」が発布され、中国共産党幹部の腐敗が大々的に摘発されるようになってからは、公金での飲食が激減したために、高級な魚介類の消費も減ってきた。そこでそれまで飲食のための魚の密漁に励んでいた中国の漁師たちは、少なくなったために高騰する一方の赤珊瑚に目を付けるようになったわけだ。

 密漁船のさらなる激増は、10月15日に福岡地裁が密漁者に対して言い渡した無罪判決が大きな原因の一つになっている。中国の犯罪行為をなかなか報道しない中国メディアだが、この「無罪放免」に関しては中国のネットは炎上した。この事実を知らない者はいないくらいに「密漁しても日本では無罪放免になる」ことを知っている。そのためリピーターが増え、新たに偽装船に資金を投入しなくて済むので、少ない元手で大きな利益を生むことができるようになったのである。

 密漁船の急増は、その結果現れた現象だ。密漁船には同じ船名船号が多くなっている。

 まるで組織的に増殖する、この増殖の仕方は、かつての「出稼ぎ就学生の偽造書類」の「組織的増殖」の変化率に類似している。したがって背後には必ず「密売組織」があると考えるのが妥当だろう。それを蛇頭と名付けるか否かは別問題だが……。

 いずれにしても、安倍首相には、北京APEC首脳会談の場で、堂々とこの犯罪行為を追及してほしい。

 また海上保安庁の予算増強はすぐにはできないだろうが、この緊急事態に当たって、罰則の厳罰化は可能なのではないだろうか。密漁者が「これでは採算が合わないと思う」というところまで持っていくことを望む。


遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
(ヤフーより)


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