2014年08月
2014年08月06日
朝日慰安婦報道 「吉田証言」ようやく取り消し(読売・社説)
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◆女子挺身隊との混同も認める
日韓間の大きな棘(とげ)である、いわゆる従軍慰安婦問題について、朝日新聞が過去の報道を点検し、一部だが、誤りを認めて取り消した。
韓国・済州島で慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の証言である。吉田氏は戦時中、労務報国会下関支部の動員部長だったとされる。
朝日新聞は1982年9月、「済州島で200人の若い朝鮮人女性を『狩り出した』」とする吉田氏の発言をうのみにして報じた。
◆世界に誤解広げた一因
これが韓国の反日世論をあおっただけでなく、日本について誤った認識が、世界に広がる根拠の一つとなった。今回、吉田証言を初めて虚偽と判断し、それをめぐる記事をようやく撤回した。
もっと早い段階で訂正されるべきだった。92年には疑問が指摘されながら、20年以上にわたって、放置してきた朝日新聞の責任は極めて重い。
朝日新聞は82年以降、確認できただけで計16回にわたって、吉田氏について記事にした。92年に歴史家の秦郁彦氏が吉田証言への疑問を指摘したが、修正することはなかった。
97年3月の検証記事でさえ、吉田証言について「真偽は確認できない」と表記するにとどめた。
吉田証言は、96年の国連人権委員会のクマラスワミ報告にも引用された。これが、慰安婦の強制連行があったとする誤解が、国際社会に拡大する一因となった。
朝日新聞の報道におけるもう一つの重大な問題は、慰安婦と「女子挺身(ていしん)隊」との混同である。
92年1月の1面記事で「主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。その人数は8万とも20万ともいわれる」と記した。
この記事は、宮沢首相の訪韓の直前に報じられた。政府が慰安婦問題を調査し、元慰安婦への「おわびと反省」を表明する河野談話を作成する発火点となった。
朝日新聞は今回、「女子挺身隊は、戦時下で女性を軍需工場などに動員した『女子勤労挺身隊』を指し、慰安婦とはまったく別」と、初めて誤りを認めた。
「93年以降、両者を混同しないよう努めてきた」としているが、小学生まで慰安婦にしたかのような誤解を生むことになった。
「当時は、慰安婦問題に関する研究が進んでおらず、記者が参考にした資料などにも慰安婦と挺身隊の混同がみられた」と釈明したうえ、他紙も同様の報道をしたと指摘している。
読売新聞にも当初、女子挺身隊や吉田氏に関して、誤った記事を掲載した例があった。だが、90年代後半以降は、社説などを通じて、誤りを正している。
◆正しい歴史認識持とう
疑問なのは、「強制連行の有無」が慰安婦問題の本質であるのに、朝日新聞が「自由を奪われた強制性」があったことが重要だと主張していることだ。
朝日新聞は当初、吉田証言などを基に、慰安婦の強制連行を問題視してきた。だが、強制連行の根拠が崩れると、慰安婦が慰安所に留め置かれていたことに強制性があると主張するようになる。
今回も、問題の本質は、「慰安所で女性が自由を奪われ、尊厳が傷つけられたことにある」としており、その主張は基本的に変化していない。
フィリピンやインドネシアなども含め、戦時中に多数の女性の名誉と尊厳が傷つけられる行為があったことは確かである。政府・軍の強制連行はなくとも、現在の人権感覚では、許されないこともあっただろう。
しかし、「戦場での性」の是非と、軍の強制連行があったかどうかは、区別して論じる必要がある。広義の強制性があったとして日本政府の責任を問うことは、議論のすりかえではないか。
正しい歴史認識を持つためには、あくまで真実を究明することが欠かせない。
◆日韓関係の正常化を
韓国の朴槿恵政権は、クマラスワミ報告などを根拠として、日本政府が6月に発表した河野談話の検証結果にも強く反発している。その頑(かたく)なな対日強硬姿勢は、簡単には変わるまい。
政府は、安易な妥協をすることなく、慰安婦問題に関する日本の立場に対する韓国の理解を粘り強く求めていかねばならない。
日韓関係は今、首脳会談が2年以上も開かれない異常な状態にある。両国のメディアや国民も、冷静に事実関係を把握したうえで、未来志向の関係の構築に向けて、それぞれの努力を心がけたい。
朝日慰安婦報道 「強制連行」の根幹崩れた(産経・主張)
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■これでは訂正になっていない
朝日新聞が慰安婦問題の報道について、一部の記事が虚構だったことを認めた。だが、その中身は問題のすり替えと開き直りである。これでは、日本がいわれない非難を浴びている原因の解明には結び付かない。
最大の誤報は、慰安婦を「強制連行した」という吉田清治氏の証言である。朝日はこれを虚偽だと認め、記事を取り消すという。
根拠なく作文された平成5年の河野洋平官房長官談話などにおける、慰安婦が強制連行されたとの主張の根幹は、もはや崩れた。
《誤りは逐次正すべきだ》
遅きに失したとはいえ、朝日が慰安婦問題の事実関係について検証したことは評価できよう。記事取り消しも当然である。
だが、真偽が確認できない証言をこれまで訂正せず、虚偽の事実を独り歩きさせた罪は大きい。
訂正に当たる「証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します」との表現は特集記事中にあるが、1面記事にもどの面の見出しにもない。削除対象の記事ぐらいは明記すべきだ。
朝日新聞は今回、編集担当名の記事の中で、「問題の全体像が分からない段階で起きた誤り」として専門家による研究が不足していることに責任を転嫁している。
取材などで事実が判明すれば、その都度、記事化して正し、必要があれば訂正を行うのが当然の報道姿勢ではないのか。
暴力で無理やり女性を強制連行したなどとする吉田氏の証言は、旧日本軍が慰安婦を「強制連行」したり、「慰安婦狩り」が行われたりしたという誤解がまかり通るもととなった。
吉田氏は戦時中に山口県労務報国会下関支部動員部長だったと名乗っていた。昭和58年に『私の戦争犯罪 朝鮮人強制連行』という本を出し、18年に韓国・済州島に部下を連れて上陸し泣き叫ぶ朝鮮人女性205人をトラックで強制連行したなどとしていた。
朝日新聞は、吉田氏の講演内容を57年に報じたのをはじめ、コラムなどを含め、同証言をたびたび取り上げていた。
しかし、平成4年に現代史家の秦郁彦氏が済州島で現地調査を行ったところ、地元のジャーナリストや古老らがそろって吉田証言を否定し、産経新聞がこの秦氏の調査結果を報じた。
朝日新聞は9年の特集記事取材で、吉田氏への電話取材や済州島での取材を行ったものの、裏付けが取れなかった。今年4〜5月、済州島で行った再調査でも証言は得られなかったという。
慰安婦問題は、宮沢喜一政権発足まもない3年12月、慰安婦だったという韓国人女性が日本政府を相手取り、謝罪と損害賠償を求める訴訟を起こしたのがきっかけだった。
宮沢首相訪韓を控えた4年1月には加藤紘一官房長官が十分な調査も行わず「おわびと反省」の談話を出し、宮沢氏も日韓会談で謝罪した。さらに翌5年に慰安婦募集の強制性を認めた河野談話が出された。
当時、朝日新聞など日本の一部マスコミも慰安婦問題追及キャンペーンを展開した。この中には、慰安婦と工場などに動員された「女子挺身(ていしん)隊」と混同した記事もあった。朝日新聞は今回、誤用したと認めた。
《事実が日韓の信頼築く》
朝日は今回の特集記事では、吉田氏の証言を他紙がどう報じてきたかという記事も掲載し、産経新聞が5年に大阪本社版夕刊の連載「人権考」で「吉田氏を大きく取り上げた」とした。
しかし、その後、本紙は取材や秦氏らの実証的研究をもとに、証言が「作り話」であることを何度も報じている。
朝日の報道が日韓関係悪化の発端となったにもかかわらず、「自国の名誉を守ろうとする一部の論調が、日韓両国のナショナリズムを刺激し、問題をこじらせる原因を作っている」と、ここでも責任を転嫁している。
産経新聞が河野談話の虚構性や吉田証言が偽りであることなどをただしてきたのは、事実を重ね歴史認識を正しく伝えることが長期的に日韓両国の信頼につながると信じるからだ。
菅義偉官房長官は「客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成されることを望んでいる」とした。その通りである。事実を歪(ゆが)めては国際的な信用は得られない。
東京基督教大学教授・西岡力氏 日本の名誉傷つけた
朝日新聞が吉田清治氏の証言を虚偽と判断し、記事を取り消したことは良かった。 しかし、評価に値するのはその一点のみだ。
朝日新聞が自らの非を認めるまで30年以上かかった。
その間、国際社会に日本の負のイメージがどれだけ浸透し、日本の名誉が傷つけられたことか…。朝日新聞は自らの報道だけでなく、日本が被った損害も併せて検証する責任がある。
また、一見すると反省しているように見える紙面も姑息(こそく)さが随所にうかがえる。
例えば、朝日新聞は「挺身隊」と「慰安婦」を“誤用”したという。だが、挺身隊は慰安婦ではない。事実と異なる報道をすれば、どんな事情があるにせよ“誤報”にほかならない。誤用という言葉の裏に、ごまかしや保身の念が透けてみえる。
朝日新聞は日頃の報道で、舌鋒(ぜっぽう)鋭く政治家の責任を追及する。
過ちを犯せば責任を取るのは当然だ。今こそ、その自浄能力を大いに発揮してもらいたい。
朝日新聞検証のポイント
▽朝鮮や台湾では軍の意向を受けた業者が女性をだまして集めることができた。インドネシアなどでは、軍が女性を無理やり連行したことを示す資料が確認されている。本人の意に反して慰安婦にされる強制性があった
▽吉田清治氏が済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消す。証言を裏付ける話は得られず、証言の核心部分についての矛盾がいくつも明らかになった
▽朝日新聞が1992(平成4)年1月11日朝刊で報じた「慰安所 軍関与示す資料」の記事は、宮沢喜一首相の訪韓時期を狙ったわけではない
▽女子挺身隊は、女性を軍需工場などに動員した「女子勤労挺身隊」を指し、慰安婦とはまったく別。当時は慰安婦問題の研究が進んでおらず、誤用した
▽元慰安婦の証言を報じた植村隆元朝日新聞記者の記事に意図的な事実のねじ曲げなどはない
(産経ニュースより)
朝日新聞が自らの非を認めるまで30年以上かかった。
その間、国際社会に日本の負のイメージがどれだけ浸透し、日本の名誉が傷つけられたことか…。朝日新聞は自らの報道だけでなく、日本が被った損害も併せて検証する責任がある。
また、一見すると反省しているように見える紙面も姑息(こそく)さが随所にうかがえる。
例えば、朝日新聞は「挺身隊」と「慰安婦」を“誤用”したという。だが、挺身隊は慰安婦ではない。事実と異なる報道をすれば、どんな事情があるにせよ“誤報”にほかならない。誤用という言葉の裏に、ごまかしや保身の念が透けてみえる。
朝日新聞は日頃の報道で、舌鋒(ぜっぽう)鋭く政治家の責任を追及する。
過ちを犯せば責任を取るのは当然だ。今こそ、その自浄能力を大いに発揮してもらいたい。
朝日新聞検証のポイント
▽朝鮮や台湾では軍の意向を受けた業者が女性をだまして集めることができた。インドネシアなどでは、軍が女性を無理やり連行したことを示す資料が確認されている。本人の意に反して慰安婦にされる強制性があった
▽吉田清治氏が済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消す。証言を裏付ける話は得られず、証言の核心部分についての矛盾がいくつも明らかになった
▽朝日新聞が1992(平成4)年1月11日朝刊で報じた「慰安所 軍関与示す資料」の記事は、宮沢喜一首相の訪韓時期を狙ったわけではない
▽女子挺身隊は、女性を軍需工場などに動員した「女子勤労挺身隊」を指し、慰安婦とはまったく別。当時は慰安婦問題の研究が進んでおらず、誤用した
▽元慰安婦の証言を報じた植村隆元朝日新聞記者の記事に意図的な事実のねじ曲げなどはない
(産経ニュースより)
2014年08月05日
中国、建軍節テレビ局乗っ取りは内部の者か?(遠藤誉氏)
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中国、建軍節テレビ局乗っ取りは内部の者か?
8月1日は中国人民解放軍の建軍節87周年記念日だった。
その日の夜8時頃、中国浙江省温州市のケーブルテレビ視聴者(600万人)たちの一部が、一斉に中国版ツイッター「微博」(ウェイボー)に書き込み始めた。
そこにはテレビの画面に現れた「反共黒客(ヘイクァ)」(反共ハッカー)の文字が、くっきりと映し出されている。しかも禁断の画面である天安門事件や法輪功(の拷問の場面)あるいは天安門前で自殺する人々の画面が次から次へと現れている。
視聴者はテレビ画面を見た瞬間に携帯で撮影したのだろう。画面には中国大陸のネットの百度空間にある「騰訊微博」や「天涯社区」などのロゴマークがある。
温州市でケーブルテレビを通して放映されている中央テレビ局CCTV1(総合)やCCTV6(体育)あるいはドラマなど、全ての番組が8分間近くに渡って独占され、画像と同時に、次のような文字が流れ続けた。
「土共非法偽政府」(田舎者の共産党による非合法偽政府)
「共匪才是罪犯」(共産党匪賊こそが犯罪者だ)
「向追求自由的人們致敬」(自由を求める人々に敬意を表する)
「勿忘六四」(天安門事件を忘れるな)
「釈放王炳章」(王炳章を釈放せよ)
ほかにも劉霞や劉暁波ら、民主活動家の写真が並び、釈放を呼び掛けている。
ほどなくして、どの局の画面も真っ黒になり、異常が生じたことを視聴者に知らせる文字だけが現れたという。
◆どうも、奇妙だ!
筆者は微博に貼り付けられた画面と文字を見て、何とも奇妙な違和感を覚えた。
特に「土共」、「非法偽政府」および「共匪」という文字である。
これは筆者が経験した1946年から49年の間に戦われた革命戦争中に、国民党側が共産党側を軽蔑して付けた名前だ。つまり、国民党の蒋介石が共産党の毛沢東を軽蔑して、国民党占領下にある地域の庶民たちを洗脳し、徹底して「共産党は悪である」という思想を植え付けるために使った言葉である。
特に国共内戦(国民党と共産党の内戦)とも呼ばれている革命戦争で国民党が敗退し、共産党側が各地で共産党による地方政府を設立すると、それを「偽政府」と呼び、「中華民国」の「国民政府」を正統とした。そして今もなお「中華人民共和国=中国」を「非合法偽政府」と罵っている一派がいる。
これらは、現在中国大陸に潜んで活動している民主活動家たちが使う言葉とは違うのである。
おまけに8月1日という中国人民解放軍の建軍節を選んだという背景には、軍に対する恨み、つまりは共産党軍に負けた国民党軍の恨みが混在しているものを感じてならない。温州は台商の多いところ。「温州市台湾同胞投資企業協会」もある。
何かがあると感じた。
◆敵は内部に――「内鬼」だ!
案の定、「中国茉莉花革命」というウェブサイトに載っている温州市地元の時事評論員の言葉によれば「内鬼がいる!」とのこと。「敵は内部にいる」という意味だ。
温州市では市レベル以下の地域におけるテレビ放映は、必ず地上にあるケーブル放送を経由しているので、その経由会社の中で操作しない限り、外からは侵入できないというのである。
また他のネットユーザーによれば、最近温州市では至るところでキリスト教の教会に対する強制撤収があり、政府に不満を持つ者の仕業だろうとも書いている。
◆微博情報完全削除でネット空間監督は強化されたが……
8月1日午後8時過ぎ、中国大陸のネット空間に集中的に現れた禁断の画像に関する情報は、その後すぐに削除された。
しかし、検索したページには1,500項目ほどタイトルだけがヒットする。そのタイトルをクリックすると「申し訳ありません。このページは存在しません」という文言が出てくる。一つとして残っていない。
中共中央の周りには40ほどの「領導小組」という指導グループがあり、シンクタンクの役割を果たしている。その中の一つに「中央網絡(ネットワーク)安全和(と)信息化(情報化)領導小組」というのがあり、その組長は習近平だ。
一方、習近平は「中央対台領導小組」(対台湾中央指導グループ)の組長でもある。
台湾に対して税金の優遇などをして台商投資区を福建や浙江省など台湾に近い地域に設け、台湾を大陸側に抱き込もうとしている。
しかし台湾も一筋縄ではいかない。
台商として大陸の深くに潜り込みながら、「闘魂」だけは貫いている者もいるだろう。
ハッカーなので「中央網絡安全和信息化領導小組」が動き、ネット空間の監督強化へと反応するだろうと考えてしまうが、それだけでは防ぎきれない反政府行動の隙間があることを、今回の「ハッカー事件」は教えてくれた。
遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授、上海交通大学客員教授、(日本)内閣府総合科学技術研究所専門委員などを歴任。著書に『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』『チャイナ・ギャップ 噛み合わない日中の歯車』『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付』など多数。
2014年08月04日
毛沢東の反腐敗運動を模倣する習近平――周永康事件(遠藤誉氏)
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数千年にわたる中華王朝の歴史は、腐敗と退廃による滅亡を繰り返してきた歴史だと言っても過言ではない。
中国共産党という、本来なら腐敗を生まないはずの政権が1949年10月に誕生したが、建国の父、毛沢東は腐敗が国を滅ぼすことを熟知していた。
中国には「拉関係、走后門」(ラーグアンシ、ゾウホウメン)(コネと裏口=袖の下)の精神文化があるからだ。
そのため建国2年後の1951年には「三反運動」(反腐敗、反浪費、反官僚主義)を唱えて数百万人に及ぶ腐敗分子を逮捕している。
政府側の統計で、全人口6億弱の中で、800万〜900万の者が摘発され、逮捕者18.4万人、党籍剥奪11.9万人、自殺や獄死者13.4万人、公開処刑者40人となっているが、しかし人民の間では、死者の数は200万から500万人だというのが定説だ。
その中には労働改造所などに収容されたまま、二度と再び娑婆(しゃば)に出て来なかった者の数も入っている。
筆者はそのとき天津にいたが、父の友人も、「嫌疑」だけで労働改造所に入れられたまま消息を絶ち、生涯出てくることはなかった。
◆毛沢東の「大虎も小虎も同時に叩け」
このとき毛沢東が唱えたスローガンは「大虎も小虎も同時に叩け」である。
「打虎部隊」(虎退治部隊)を結成して、「大虎=大物腐敗分子」と「子虎=小物腐敗分子」を全土で逮捕すべく、虎退治に向けて突撃させた。
習近平はこの「小虎」の部分を「ハエ」に置き換えて「虎もハエも同時に叩け」としただけで、戦略は完全に毛沢東の模倣である。
「ハエ」にしたのは、80年代半ばに改革開放を進め過ぎると守旧派から非難されたトウ小平が「窓を開ければハエだって入ってくるさ」といった「ハエ」から来ている。
50年代初頭の三反運動で最初に公開処刑されたのは劉青山と張子善だ。
二人とも中国が建国されるまでの革命戦争の英雄。
新中国(現在の中国)建国のために、命をかけて戦ってきた。
その二人を処刑することに周囲からは反対の声も上がった。
すると毛沢東は
「二人の命が大事か、それとも国家が大事なのか!」
と一喝し、公開処刑を断行。
特に劉青山は天津市の書記(中国共産党天津市委員会のトップ)を務めていたので、筆者が通っていた天津の小学校では、毎日「劉青山の公開処刑」に関する学習会に参加することが強要され、恐ろしさに震え上がったものである。
これが毛沢東の目的だった。
毛沢東は「殺一●(人偏に敬)百、反過来警告群衆」(1人を殺すことによって百人を戒めることができ、それはひるがえって群衆への警告となる)と言ったのである。
毛沢東はさらに、「この二人を公開処刑することによって初めて、2人が20人、200人、2000人、そして20000人の党幹部の過ちを未然に防ぐことができるのだ」とも言った。
◆現在の中国共産党幹部の天文学的汚職金額
汚職というのは陰でこっそり行うものなので、なかなか正確な数値ははじき出せないが、アメリカの金融監督機構 が2012年12月に出した報告書によれば、2011以前の11年間で中国の党幹部の腐敗による海外不正流出額は3.79兆ドル(約400兆円)であるという。
おおまかに10年で割ったとして、年平均40兆円という計算になる。
事実、党幹部による2010年の不正蓄財は約40兆円で、2011年は60兆円なので、この金額は妥当ということになろう(詳細は『中国人が選んだワースト中国人番付――やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』のp.145前後)。
これほどの腐敗が横行している中国が、中国の歴代王朝同様に、腐敗で滅びないという保証は、もはやない。
中国共産党の一党支配体制が崩壊するとすれば、必ず「腐敗で滅びる」。
筆者はそう確信している。
事実、2012年11月の第18回党大会の時、前総書記の胡錦濤も現総書記の習近平も、口をそろえて「腐敗問題を解決しなければ、党が滅び、国が滅ぶ」と叫んだ。
それほどに党は崩壊の危機にさらされているのである。
◆誰もゴルバチョフになりたくない
世界最大の共産主義国家であったソ連は、ゴルバチョフ大統領の代で滅んだ。
この世から「ソ連(ソビエット連邦)」という国は消滅したのだ。
何としても中国共産党の一党支配体制を維持し、「第二のゴルバチョフ」にだけはなりたくないと、中国の国家主席は必死で共産党の統治体制維持に邁進している。
習近平もその例外ではない。
いや、習近平こそが、最もその危機に立たされた国家主席だと言っていいだろう。
なぜなら腐敗の額も、貧富の格差も、(利益集団がもたらした)環境汚染も、(食品や、党幹部の不正常な異性交際などにおける)モラルの低下も、そして何より暴動件数も、建国以来、最大になっているからだ。
このような現実を見ずに、周永康事件の根源は「権力闘争」だと主張するチャイナ・ウォッチャーや報道関係者がいるのは、実に嘆かわしいことだ。
現在の習近平政権内に、「まだ権力闘争をしているゆとりがある」と見ているということになる。
中国共産党指導部内には、もはや、そのような「ゆとり」はない。「権力闘争」をしているということは、「まだそのゆとりがある」と中国を見ているということになり、それは「中国を高く評価しすぎだ」としか、筆者には思えない。
「権力闘争」と言えば、人目を引きはするだろう。おもしろおかしくも描けるだろう。しかし、そのような矮小化した視点で中国を見ていると、日本の戦略をさえ誤らせると、筆者はそれを懸念する。
習近平政権ができ上がるまでは、まちがいなく熾烈な権力闘争が繰り広げられた。
筆者自身、『チャイナ・ナインーー中国を動かす9人の男たち』で「権力闘争」を詳述してきた。だから責任を感じている。しかし第18回党大会後は事態が変わったことを、前回の記事と合わせて、どうか注目してほしいと希望する。
党大会前には権力闘争はまたやってくる。
しかし今はその政治の時代ではなく、「誰もがゴルバチョフになりたくない!」と必死なのである。
それほどに「党の基盤」自体が脆弱になっているのであって、誰がトップに立ってもその脆弱さに変わりはない。
遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授、上海交通大学客員教授、(日本)内閣府総合科学技術研究所専門委員などを歴任。著書に『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』『チャイナ・ギャップ 噛み合わない日中の歯車』『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付』など多数。
(ヤフーより転載)
2014年08月01日
権力闘争ではない――周永康事件(遠藤誉 氏)
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日本の一部のメディアでは、周永康が中共中央紀律検査委員会の取り調べを受けている陰には権力闘争があるという報道が見られるが、それは間違っている。
中国では党大会が終わって新しい総書記が選出されると、10年間は絶対に安泰だ。むしろ、内部の権力闘争などあると困る。だから少なくとも「派閥」に関しては、次の党大会までは、静かにしていたい。
仮に権力闘争があるとするなら、習近平の闘いの相手は誰だというのだろうか?
「権力闘争だ」と主張する人々は、この問いに対して回答に窮するだろう。
相手がいないからだ。
◆習近平の後ろ盾は江沢民だった
習近平を中共中央総書記および国家主席にまで押し上げたのは江沢民である。
2007年、第17回党大会前の北戴河における密談で、当時の胡錦濤国家主席は、何としても共青団(中国共産主義青年団)腹心の李克強を次期総書記および国家主席に持って行こうと意気込んでいた。それを真っ向から反対して李克強の代わりに習近平を押し込んできたのは江沢民だ。
その知恵を江沢民に吹き込んだのは曽慶紅。習近平の「太子党」(革命第一世代の子女、紅二代)(太子党は蔑称)としての兄貴分である。習近平と曽慶紅の親交は1970年代末に遡る。以来、曽慶紅は陰になり日向になって習近平を応援してきた。
一方、この曽慶紅こそ、江沢民の大番頭なのである。したがって曽慶紅を仲介として習近平は江沢民の庇護のもとにいた。
このこと一つをとっても、習近平が派閥としての「江沢民派」に対抗して権力闘争をしているなどという構図は、考えられないことだ。
もともとの江沢民派を列挙するなら曽慶紅を筆頭として、「劉志軍、薄熙来、周永康、賀国強、賈慶林、徐才厚、李長春、張徳江、兪正声、王雲山、張高麗……、そして習近平」などである。習近平は、もともと、これら江沢民派の支持を得ていた。
◆共青団と対立しているのか?
では現在のチャイナ・セブン(中共中央政治局常務委員)の党内序列第二位である李克強(共青団)と習近平は対立しているのだろうか?
答えは「否」である。
李克強は自分の置き所を心得ており、国務院総理として、今ではいきいきと力強く本領を発揮している。習近平に対抗しようなどとは、今では微塵も思っていない。なぜなら2012年11月の第18回党大会で「習近平が総書記」と決まり、2013年3 月の全人代で習近平が国家主席、李克強が国務院総理と決まったからには、10年間、この職位が変わらないことを知っているからだ。だから李克強は、むしろ喜々として国務院総理の役割を果たしている。習近平と競争をする必要は皆無だ。
むしろ共青団における兄貴分の胡錦濤が、習近平と仲がいいので、李克強も習近平とは仲がいい。胡錦濤は習近平の父親の習仲勲(本来は員に力)(しゅう・ちゅうくん)のお蔭で中共中央委員会委員になり、出世の足場を築いているので、習仲勲を尊敬している。天安門事件のきっかけとなった胡耀邦おろしの際にも、ひとりトウ小平に逆らって胡耀邦を守ったのは習仲勲だけだった。胡耀邦は胡錦濤の大の恩師。したがって胡錦濤は習仲勲を敬愛していたので、その息子の習近平には一目置いているのである。
2012年の第18回党大会で、胡錦濤と習近平は協力して、「チャイナ・ナイン」を「チャイナ・セブン」に持って行った。つまり中共中央政治局常務委員の数を「9人」から「7人」にしたのだ。
その目的は「中共中央政法委員会書記」のポストを最高指導部である常務委員から降格させることにある。
この時点で「周永康を摘発する」という約束は、胡錦濤と習近平の間ででき上がっていた。なぜなら、あまりに(公安、検察、司法をつかさどる)政法委員会の横暴さが目に余っていたからだ。その横暴さは職権乱用と腐敗により人民の不満を招き、年間18万件に及ぶ暴動を生んできた。
◆習近平の狙いは?――摘発した「虎」は江沢民派ばかり?
「虎もハエも同時に叩く」というスローガンに沿って反腐敗運動を推進してきた習近平政権は、今年の1月までに18万人の腐敗分子を摘発し、そのうち党幹部は15万人だった。
虎は大物の腐敗分子、ハエは小物の腐敗分子である。大物のうち、ほとんどは元江沢民派だ。
それは結果論であり、江沢民の下に「利権集団」ができ上がったことに原因がある。
決して「江沢民派」を打倒しようとして、その配下にいる「虎」を捉えようとしてきたわけではなく、腐敗分子を捕えた結果、それが江沢民の利権集団と関わっていたということなのである。
中国共産党員の腐敗は限界に来ており、「腐敗を撲滅しなければ党が滅び、国が滅ぶ」ことは、誰の目にも明らかだ。だから世話になり、自分を支援してきてくれた「虎」が江沢民派であったとしても、党の支配を維持していくためには斬りこんでいくしかない。
そして習近平がやっていることは「国家のため」というより「一党支配を維持していくため」なのである。
この詳細は、また次回に回そう。
遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授、上海交通大学客員教授、(日本)内閣府総合科学技術研究所専門委員などを歴任。著書に『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』『チャイナ・ギャップ 噛み合わない日中の歯車』『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付』など多数。
(ヤフーより転載しました)