2009年12月

2009年12月21日

子ども手当で混乱

 今頃になって、民主党マニフェストの掲げる目玉の「子ども手当」が混乱している。

「国民の生活が第一。」の具体策として掲げる目玉の「子ども手当」にしても、公約通り実現できるか、実に怪しいものである、と指摘した。

 この政策は、所得に関係なく全ての子育て世帯に、中学卒業まで一人あたり年三十一万二千円(平成二十二年度はその半額)を全額国費で支給するもので、総選挙の際、耳にタコができるほど繰り返された。

 だが、そのための予算は毎年五・五兆円(平成二十二年度は二・七兆円)で、現在の文教科学振興費の五・二兆円、防衛費の四・七兆円より巨額である。当然、その予算を捻出する打ち出の小槌が民主党にあろうはずもない。
 案の定、予算編成で混乱している。でも、今回は半額なのだ。
 これが全額になるともっと大変だ。
 以下、産経新聞主張を掲載する。


【主張】子ども手当迷走 基本設計を怠ったツケだ(12.19)

 来年度から導入される「子ども手当」に所得制限を設けることをめぐり、政府・与党が混乱している。政府は「年収2千万円」を支給上限とする案を軸に検討を始めたが、長妻昭厚生労働相や社民党は制限を設けないよう主張している。

 子ども手当の所得制限は民主党の政権公約にはなかった。だが、手当支給の初年度となる来年度は半額(月額1万3千円)だけでも2・3兆円もの巨費が必要となる。対象の子供がいない世帯で負担増となることへの不公平感や、「本当に子供のために使われるのか」といったバラマキ批判は根強い。所得制限の導入は現実的な判断といえよう。

 民主党は8月の衆院選で「無駄の排除などで財源を捻出(ねんしゅつ)する」と大見えを切っていたが、無理があったということだろう。鳩山由紀夫首相には、所得制限の検討に入った理由と、どういう理念に基づいて所得線引きをするのか国民に明確に説明するよう求めたい。

 財源が当初の想定通りに確保できなくなることは十分予想できたはずだ。「高額所得者への支給はおかしい」との批判が出ることも想定できたであろう。にもかかわらず、制度設計の議論を行ってこなかったことは、無責任との批判を免れまい。

 早くもチグハグぶりが露呈している。政府が検討する「2千万円」では対象から外れる世帯はわずか0・1%で、予算削減効果は数十億円にとどまるという。一方、所得制限の導入に伴って、事務を担うことが想定される市区町村は年収確認などの作業が大きく膨らむ。結果として事務経費が増えたのでは元も子もない。参院選への影響を避けるために、制限ラインを高めに設定したのであれば本末転倒だ。

 予算削減効果を大きくするため、現行の児童手当の基準をそのまま使う案も浮上している。だが政府は手当の導入と引き換えに扶養控除を廃止する考えで、この場合、子供がいるにもかかわらず負担だけが増える世帯が生じる。これでは「社会全体で子育て」とした子ども手当の制度理念そのものが変質しよう。

 納税者番号制度がない中での所得把握は困難だ。納税者番号制度の導入スケジュールも同時に明確にすることが必要だ。少子化対策は待ったなしである。首相は多くの国民が納得できるような所得線引きを行わなければならない。

shige_tamura at 14:00|PermalinkComments(2)TrackBack(0)clip!鳩山由紀夫 | 民主党

2009年12月18日

鳩山内閣・民主党の憲法認識を欠いた政治判断を厳しく糾弾する

平成21年12月18日
自 由 民 主 党
 
 今回、天皇陛下の中国の習近平国家副主席ご引見が、これまでの慣行を破る形で実施されたことは、鳩山内閣・民主党の憲法認識の欠如及び誤った政治判断の結果であり、厳しく糾弾されなければならない。
 また、この問題に関連する関係者の一連の発言からは、鳩山内閣及び民主党には、天皇陛下に対する敬意も配慮も感じられない。
 わが党は、以下の通り、問題の所在とそれに対するわが党の見解を明らかにするとともに、鳩山内閣の政治責任を徹底的に追及する。

一 憲法及び法的な問題の所在

 今回の天皇陛下の習近平国家副主席ご引見についての憲法及び法的な論点は以下のとおりである。

(1)今回のご引見の法的性格とその内容

 今回のご引見は憲法に定める国事行為(憲法第4条2項、6条、7条)ではなく憲法第1条の「日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴」たる地位に基づく公的な行為である。したがって第7条の「内閣の助言と承認」を必ずしも要するわけではない。
 ここにいう「内閣の助言と承認」とは内閣の同意あるいは意思である(衆議院内閣委員会昭和39年4月23日内閣法制次長答弁)。
 今回のご引見のような公的行為の性格については、国会答弁において、「第一次的には宮内庁、第二次的にはそれを包括する総理府(現在の内閣府)、さらには内閣が責任を負う」とされている(昭和48年6月7日衆議院内閣委員会における内閣法制局長官の答弁、「公的行為についてはどういうふうに行われるか。これは皇室に関する国事事務を処理しております宮内庁、それを統括する総理府、さらにその総理府を総括する責任のある内閣が、責任をもってこの公的行為について、いかなる行為を行われるか、その公的行為を行われるに際しまして、憲法4条第1項にございます『国政に関する権能を有しない』という規定の趣旨にかんがみまして、いやしくも国政に影響を及ぼすことがあってはならないという配慮を十分にいたしておるわけでございまして、第一次的には宮内庁、第二次的にはそれを包括する総理府(現在の内閣府)、さらには内閣が責任を負う」)。
 また公的行為の限界についても国会答弁があり(昭和59年4月5日衆議院内閣委員会総理府総務長官)「第一は国事行為におけると同様、公的行為においても国政に関する権能がその中に含まれてはいけないということであります。すなわち政治的な意味をもつものとか政治的な影響を持つものがそこに含まれてはならないということであります。第二は、その天皇の御行為について内閣が責任をとるという行為でなければならないということであります。第三は、その行為が象徴天皇としての性格に反するものであってはならないことであります。」としている。

(2)天皇陛下の政治的行為とは 

(1)を前提とすると天皇陛下の政治利用は、「国政に関する権能を有しない」の要件の問題に帰着する。「国政に関する権能を有しない」とは「政治的な意味をもつものとか政治的な影響を持つものがそこにふくまれてはならない」ということである。
 すなわち、そのときの政治情勢や国際情勢のなかで、特定の人、特定の国、特定の政党、特定の団体を利する政治的党派性ということになると思われる。なお、そのようなことがないように事前に形式的なルールを定めておくことが憲法上の要請ということができ、本件における一ヶ月ルールがそれにあたる。

二 鳩山総理の政治判断の誤りと鳩山内閣の責任

 以上の憲法及び法的問題を踏まえ本件を検証すると、問題は鳩山総理の政治判断の誤りにある。別紙の経緯を見ても、今回のご引見は、鳩山政権の対中外交を円滑化するために、一ヶ月ルールの慣行を破り、しかも宮内庁は慣行を理由に二度にわたり断り、一度は正式に中国政府までその回答を行っているにもかかわらず、総理の強い指示により、強引な形で実現されたものである。
 これは「政治的に意味をもつ行為、政治的な影響をもつ行為」にあたり、それを指示した総理の判断は「天皇陛下の政治利用」であるというべきである。 
 また、鳩山総理自身が「日中関係を未来的に発展させるために大きな意味がある。判断は間違っていない。」と政治的意味について発言したことも、問題である。
 今後の影響についても、宮内庁長官の会見を引くまでもなく、「天皇陛下のお務めのあり方、天皇の役割」といった基本的な事柄にも関わるものであるということの認識が欠如している。
 また、このご引見は、「日中関係の発展の為」という理由でなされたにもかかわらず、逆に、国民の中国に対する考え方に悪影響を及ぼしてしまったことに関しても、鳩山内閣の判断に対する責任を問わねばならない。

三 その他、民主党関係者の発言について

 1.小沢民主党幹事長の発言について

 内閣の一員でもない民主党の小沢幹事長は、今回の件も含む天皇陛下の公的行為について、以下のような発言を繰り返している。天皇陛下のお考えを忖度するような発言もあり、公党の幹事長として、また一国会議員として極めて不適切である。我々は、小沢幹事長の不見識並びに、憲法認識の欠如についても厳しく指摘していく。

【主な発言】
・(天皇陛下の訪韓は)韓国の皆さんが受け入れてくださるのなら結構なことだ。
<12月12日 韓国・李明博大統領との懇談>

・天皇陛下のお体がすぐれないと、体調がすぐれないというのならば、それよりも優位性の低い行事を、お休みになればいいことじゃないですか。
・天皇陛下ご自身に聞いてみたら、手違いで遅れたかもしれないけれども、会いましょうと、必ずそうおっしゃると思うよ。
<12月14日 記者会見> 


2.前原国土交通大臣の発言について

 12月7日平野官房長官の指示で外務省中国・モンゴル課長が中曽根元首相に一ヶ月ルールを説明し、中曽根元首相はこれを了承した。前原国交大臣は、この事実を歪曲し、あたかも自民党側が今回のご引見を要請したかのごとき発言をし、わが党に責任転嫁し、わが党の名誉を毀損している。この点について国交大臣の釈明を求めるものである。

shige_tamura at 16:19|PermalinkComments(4)TrackBack(0)clip!自由民主党 

天皇陛下の習近平中国国家副主席ご引見に関する経緯

天皇陛下の習近平中国国家副主席ご引見に関する経緯(自民党政調まとめ)
(平成21年12月17日現在)


平成21年年初・中国政府より「国家指導者の一人」が来日するとの調整の打診。

秋頃   ・「国家指導者の一人」が習近平国家副主席であることが判明。
      ・外務省より、再三、中国政府に具体的日程の提出を求める。(あらゆるチャンネルで)

11月19日(木)・楊潔篪中国外交部長訪日時に、同行者から外務省中国・モンゴル課長に「12月中旬」との内報。外務省より内々宮内庁に打診。
・習副主席来日の話を平野官房長官が知る。【朝日・毎日・産経】

11月20日(金)・国会内で楊潔篪中国外交部長と小沢幹事長が会談。山岡国対委員長ら同席。【朝日・読売・毎日・産経】(このころ山岡委員長が宮内庁と協議。【朝日】)

11月23日(月)・中国政府から外務省に正式に訪日日程が伝達。

11月26日(木)・アジア大洋州局長、宮内庁式部官長を訪問、引見可能性についての打診。宮内庁は「一か月ルール」で極めて困難であると反応。

11月27日(金)・宮内庁は外務省に「一か月ルール」で不可能であると正式に回答。外務省より在京中国大使館に「ほぼ不可能である」と説明。

11月30日(月)・官邸とも調整のうえ、外務省より「引見不可能」と中国政府に連絡。


12月3日(木)・北京にて王光亜外務副部長から宮本大使に引見の要請。

12月4日(金)・鳩山首相が小沢幹事長と会談【朝日・読売・毎日・産経】

12月7日(月)・平野内閣官房長官より羽毛田宮内庁長官に「日中間の重要性に鑑み、是非陛下のご引見が実現できないか」との話あり。羽毛田長官はこれまでのあり方を説明。平野官房長官は引き取る。

・平野官房長官から、外務省中国・モンゴル課長に「中曽根元首相に(習近平国家副主席訪日の一連の)経緯<第一回会議では一か月ルール>を説明するように」との指示。中国・モンゴル課長が一か月ルールも含め説明。元首相は「わかりました。」と返事。一か月ルールをまげる等の働きかけ・要請は一切なし。

・鳩山首相が平野官房長官に「何とかできないか。非常に重要なんだけど」と宮内庁との調整を指示。【朝日・読売・毎日・産経】

12月9日(水)・崔天凱大使より平野官房長官に引見実現の要請。
・国会内で崔天凱大使が小沢幹事長と会談。山岡国対委員長ら同席。「何とか陛下と副主席を会わせてほしい」と懇願した。【朝日】

12月10日(木)・平野官房長官より羽毛田長官に「総理の指示もあり、引見を実現するように」と指示。羽毛田長官は宮内庁の考え方を説明するも、指示に従う。

・宮内庁より外務省に「15日午前にご引見実現」と内報。
・アジア大洋州局長から、孔鉉佑公使に引見実現を伝達。

・平野官房長官が羽毛田長官に電話「君の言うのもわかるけど、日中関係は重要だから。これは政府官邸としてのお願いだ。」【朝日・読売】
・北京で胡錦濤国家主席と小沢幹事長が会談。【朝日・読売・毎日・産経】

12月11日(金)・外務省が習近平国家副主席の訪日日程を発表。
・15日の日程追加について、宮内庁記者会に羽毛田長官が説明。

・羽毛田長官が天皇陛下に願い出をして会見が決まる。【毎日】

12月14日(月)・鳩山総理が記者団に「日中関係を未来的に発展させるためには大きな意味がある。判断は間違っていなかった」と発言。【読売】

12月15日(火)・天皇陛下、習近平副主席をご引見。

新聞社説が民主党の予算要望を批判

 今朝(12月18日)の新聞社説が民主党の予算要求を批判しています。
 以下、掲載します。


朝日新聞・民主予算要望―権力はどこにあるのか 

 民主党の小沢一郎幹事長が鳩山由紀夫首相に対し、来年度予算編成と税制改正に向けた要望書を手渡した。
 業界団体や自治体から受けた約2800件の陳情を踏まえたものだ。小沢氏は「全国民からの要望だ」とし、可能な限り反映するよう首相に求めた。
 その内容は、陳情をただ列挙したわけではない。18の重要政策に絞り、具体的な方針を明示した。中には総選挙で掲げたマニフェストと異なるものも含まれている。
 公約といっても、具体化にあたっては経済情勢や実情に応じて中身や実施時期を見直すのはありうることだ。
 ガソリン税の暫定税率廃止について、現在の租税水準を維持するとした。公約違反という批判はあるかもしれないが、不況による大幅な税収見込み減や地球環境への悪影響を考慮すれば、現実的と言えるのではないか。
 一方、看板政策である子ども手当では所得制限の導入を打ち出した。財源不足を考えてのことだろう。どの程度の制限を設けるかはこれからだが、子育ては社会全体で担うという理念や方向性を見失っては元も子もない。
 民主党は「コンクリートから人へ」の大方針を掲げてきた。だが要望書には、整備新幹線早期開業のための予算や高速道路整備の推進、公共事業にあてる自治体への交付金創設が盛られる一方、保育所の待機児童への言及はない。方針がかすんだ感は否めない。

 見過ごせないのは、陳情のとりまとめと称して、党が政策の優先順位決めや予算配分に大きな影響力を行使する形になった点だ。
 民主党は、予算編成などで与党が強力な発言力をもった自民党政権時代の二元的な仕組みを改め、内閣に一元化すると言ってきた。責任の所在を明確にし、意思決定の過程を透明にしようという狙いである。

 ところが、今回のやり方では、だれがどのような基準で項目を選び、なぜそういう結論に至ったのか皆目わからない。著しく透明性に欠ける手法だ。
 政府が要望をそのまま受け入れれば、有権者の目には、小沢氏が政策を最終的に決める権力を握っていると映ってしまうだろう。
 ただ、政策決定に党がかかわる背景には、閣僚ら政務三役がそれぞれの省の立場を主張するばかりで、なかなか結論を出せない政府の迷走もあろう。官僚による調整をやめたのはいいが、首相や国家戦略相、官房長官が調整できず、小沢氏が助け舟を出して方向付けをした。そんなふうにさえ見える。

 大事なのは、首相が要望を踏まえつつも縛られず、政権の大方針に沿っているかを精査し、自ら決めていくことだ。さもないと政治の透明性は貫けないし、鳩山、小沢の「二元体制か」という疑念がさらにふくらんでいく。


毎日新聞:民主党予算要望 公約を「密室」で破るのか

 政権の信頼に直結する問題である。民主党は来年度予算編成に向けた要望でガソリン税などの暫定税率の維持と「子ども手当」支給への所得制限の導入を求め、マニフェスト根幹部分の事実上の転換を要請した。
 さきの衆院選で民主党が国民に示したマニフェストの実現については、私たちも優先順位をつける必要を認め、各種の世論調査でも完全実施にこだわるべきでない、との意見が強い。だからといって、十分な議論と国民への説明もなく党の要請で唐突に変更するのでは、国民との約束は何だったのかということになる。

 政治責任をかけて公約を「必ず実現する」としていた鳩山由紀夫首相の過去の発言は重い。仮に転換するのなら理由をきちんと説明し、国民に謝罪すべきである。

 「党の要望は国民の思いを背に受けた要望で大事にしたい」−−。小沢一郎幹事長からの要望に関し、首相は記者団にこう語ったという。だが、首相の心中にあるのは身動きが取れなくなった中で、助け舟を出された安堵(あんど)ではないか。公約実現に必要な財源確保には国債の大量増発しか道がなく、首相が追いつめられていた客観状況は理解できる。

 かといって、小沢氏主導の下、党の要請で予算編成直前に主要公約をいきなり転換しようという、今回の過程はあまりに乱暴だ。党が集約した陳情は「国民の思い」ともちろん、イコールではない。しかも、公約転換という重大決定に理解を得るための党内論議が国民の前で尽くされてもいない。そもそも鳩山内閣は政府・与党の一元化による政治主導実現を目指していたはずだ。党の要望通りにさっさと公約を転換するのであれば、自公政権以上の「党高政低」である。

 特に「子ども手当」への所得制限の導入は首相が「子どもを社会全体が育てる発想。所得制限を考えないのが基本線」と説明してきたはずの制度の理念の変更にかかわる。実際に導入する場合の「線引き」や、所得把握の問題をどう、解決するのか。定額給付金の同じ問題で麻生政権が迷走した轍(てつ)を踏まぬためにも、制限の見送りを求めたい。

 ガソリン税の暫定税率に関しては、民主党が公約していた廃止の見合わせはやむを得ないと私たちも指摘してきた。ただし、それは環境税制をめぐる制度設計の議論などと並行すべきであり、問答無用のような転換では、国民の理解は得られまい。

 政権公約の完全実施をめぐり寛容な世論があるからといって、あからさまに軽んじるようでは、国民から必ず手痛いしっぺ返しを受けよう。首相は決して、有権者を甘くみてはならない。


産経新聞【主張】民主党予算要望 透明性を欠く意思決定だ

 政策決定の一元化の観点から「政策に関与しない」としてきた民主党の小沢一郎幹事長が、来年度予算の重点要望で鳩山由紀夫首相に厳しく注文をつけた。

 ガソリン税の暫定税率維持や子ども手当への所得制限導入など、予算・税制の焦点にあたる内容も含んでいる。マニフェスト(政権公約)の実現と財源不足の板挟みとなり、首相らは結論を出しきれずにいた。業を煮やした党側が、財政状況から現実的な対応を指示したようにも映る。
 問題は、党側での意思決定過程や判断基準が見えにくく、透明性を欠いていることだ。マニフェストの重大な変更にあたるのに、十分な説明も行われていない。

 小沢氏は代表時代、暫定税率廃止を譲らず、昨春はガソリン税の暫定税率が期限切れとなり大混乱となった。今回の結論がどう導き出されたのかを説明しないようでは、看板の透明性確保が泣く。

 首相は米軍普天間飛行場の移設問題などと同様、子ども手当の所得制限など内政問題でも発言のブレが目立っている。暫定税率廃止について「最終的には私が結論を出す」と述べているが、小沢氏から示された重点要望が最終判断になるとの受け止めが広がっている。小沢氏が最終決定するなら政策決定一元化は何だったのか。

 重点要望の根拠とされるのが、党本部に集められた全国各地からの陳情だ。民主党は地方の県連組織を通じて陳情を幹事長室に集約し、その他のルートは禁じるルールを設けた。個々の議員と省庁との癒着を排そうという意義はある。だが、密室で陳情の扱いが決まる印象を持たれ、自治体や地方議会から反発も出ている。民主党支持者でないと陳情を受け付けてもらえないのかという疑問が出ている。それではおかしい。
 来年の参院選に直結する予算要求も目立つ。農業戸別所得補償制度の早期導入もその一つで、財源を土地改良事業予算から振り向けるよう具体的に要求している。自民党は全国土地改良事業団体連合会の組織を通じて、農業団体と強固な関係を構築してきた。党派の優先が背景にあるのだろうか。

 小沢氏は「選挙に勝ったから内閣が組織できているんだ」と、首相らに選挙向け予算の重要性を訴えた。選挙のためという価値基準で予算を決めるというなら、国民の利益はどう確保されるのか、疑念を持たざるを得ない。


東京新聞・民主予算要望 きちんと説明責任を

 民主党が来年度予算編成と税制改正でガソリン暫定税率維持と子ども手当の所得制限導入を打ち出した。政権公約(マニフェスト)とは食い違う。なぜ路線変更したのか、しっかり説明すべきだ。
 予算編成が進まず、どうなるのかと心配していたら、民主党から思い切った政府への要望が出てきた。ガソリン暫定税率の廃止も子ども手当も先の総選挙で民主党が掲げた公約の目玉案件である。
 景気悪化で税収が激減する中、背に腹は代えられない財政事情は分かる。「高所得者に子ども手当は必要ない」という議論にも一理あるだろう。

 経済政策は景気動向に応じて柔軟に実施するのが基本だ。公約に掲げたからといって、なにがなんでも断行するかたくなな姿勢でいる必要はない。ガソリン税についても環境税を含めて税制全体を設計する中で見直す余地がある。

 そう認めたうえで、むしろ懸念するのは政策決定プロセスのあり方だ。民主党は政府と党の一元化をうたって、政策決定は政府の仕事と説明してきた。ところが、この間の鳩山内閣は重要課題の決定をことごとく先送りし、予算編成と税制改正論議も「党の出方待ち」の状態になっていた。

 そこに投げられた民主党要望に対して、鳩山由紀夫首相は「党というより国民の思い。感謝する」と語っている。まるで政府に代わって、小沢一郎幹事長率いる党が予算編成と税制改正の基本方針を決めているような印象がある。

 鳩山首相は十七日になって「わたしが決める」と語り、長妻昭厚生労働相は所得制限に否定的な姿勢を示しているが、要望通り決着するなら、民主党が舞台裏の密室で決めたも同然になる。この間の党内議論は小沢幹事長と少数の側近が仕切って、国民にはなにがどう議論されたのか、さっぱり伝わってこない。

 政府が決める前であっても、党には党の説明責任がある。民主党が重視してきた透明性確保の点で重大な疑念を抱かざるをえない。インナーと呼ばれる少数の実力者が税制改正を決めた自民党時代と変わらなくなってしまうのではないか。

 経験不足で意思決定に不慣れな鳩山内閣に小沢幹事長が助け舟を出したとみることもできる。そうであるなら、小沢幹事長は説明役も引き受けねばならない。政権発足から三カ月が過ぎた。もう年の瀬だ。鳩山首相には、なにより果断な決断を求める。

shige_tamura at 13:45|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!小沢一郎 | 民主党

2009年12月16日

普天間先送り・社説(読売、日経、産経)

 普天間先送り・すべての社説が批判しています。

普天間移設 展望なき「越年」決定は誤りだ(12月16日付・読売社説)

 鳩山首相は、米軍普天間飛行場の返還を頓挫させたことで、歴史に名を残すのではないか。そんな深刻な危惧(きぐ)を抱かざるを得ない。

 政府が、沖縄県の普天間飛行場の移設問題について、結論を来年以降に先送りする方針を正式決定した。移設先は、現行計画の見直しも視野に入れ、与党3党で協議していくという。
 民主、社民、国民新の3党連立政権を維持するため、国益より党益を優先した結論だ。11月の日米首脳会談で合意した「迅速な結論」を一方的に反古(ほご)にするもので、長年積み上げてきた日米の信頼関係を崩壊させかねない。

 米側は日本の新方針に否定的な姿勢を示しており、今後の日米交渉は難航するのが確実だ。来年の日米安保条約改定50周年に向けて同盟を深化させる協議が開始できないだけでなく、日米関係全体の停滞が懸念される。
 そもそも普天間飛行場の代替施設は部隊運用上、他の海兵隊基地と近接している必要がある。このため、1996年の日米合意以来、一貫して県内移設が飛行場返還の前提条件となっていた。

 この前提を見直して県外・国外移設を提起する場合、この13年間の日米の共同作業は無に帰し、返還合意さえ白紙に戻る。鳩山政権は、その重大な意味を理解し、今回の決定をしたのだろうか。
 この事態を招いた最大の責任は無論、「最後は私が決める」と言いつつ、優柔不断な対応に終始してきた鳩山首相にある。
 首相は、米国も沖縄も社民党も大切だとして、会談相手ごとに都合のいい発言を繰り返してきた。その結果、県外移設論が沖縄や社民党に高まり、自らの選択肢を狭めてしまった。

 本人の発言も、日替わりのようにぶれ、関係者を混乱させた。首相としての資質が問われる。
 問題は、移設先の決着を来年に先送りしても、何の展望も開けないことだ。県外移設は現実的な候補が見当たらない。一から具体案を検討し、米国と沖縄と移設先の同意を得るのは極めて困難で、膨大な時間と労力を要しよう。

 それでも、鳩山首相は、現行計画以外の案を模索する考えを表明した。現行計画の実施費を来年度予算案に計上する、という政府方針と明らかに矛盾する。
 首相発言が新たな混乱を引き起こすのは避けられまい。首相は本当に、日米同盟を堅持しつつ沖縄の負担軽減を実現したいのか、重大な疑問が残る。



日経社説 普天間先送りが深める日米同盟の危機(12/16)

 沖縄の米軍普天間基地の移設先決定の先送りは、日米同盟をめぐる現在の危機的状況をさらに深める結果になる。「日米基軸」との言葉とは裏腹に、鳩山政権が行動で示す日米同盟の空洞化と対中傾斜に対し、懸念を覚える。

 政府は15日、首相官邸で基本政策閣僚委員会を開き、普天間基地の移設先の決定を来年に先送りし、(1)現行計画を含め、移設候補地を与党3党で検討する(2)日米の協議機関の設置を米側に提案する(3)現行計画に基づく移設関連費用は2010年度予算に計上する――ことを決めた。

 移設先の決定期限を来年5月とする案もあったが、社民党の反対で見送った。10年度予算への費用計上によって現行の日米合意をかろうじて生かしたが、与党内の協議の行方、米側の対応は不透明だ。決定先送りは、宜野湾市の市街地を分断・占領する形で存在する普天間基地の現状固定につながる。

 日米同盟の管理、運用を担当する岡田克也外相、北沢俊美防衛相は、日米合意を年内に確認するよう求めてきたが、鳩山由紀夫首相は社民党に対する配慮を優先した。米国務省のケリー報道官は14日、「合意済みの米軍再編ロードマップ(行程表)が最善の計画だ」と述べており、日米間の溝が埋まる気配はない。
 岡田外相は日米同盟の現状に危機感を表明してきているが、外交面では既に実害が出ている。

 コペンハーゲンで正式な形での日米首脳会談が見送られれば、日本は温暖化問題で米側を説得する場を失う。環境問題に熱心な鳩山首相にとって、自らの判断がこのような結果をもたらすことに対する自覚はあるのだろうか。

 「日米関係はぎくしゃくしている。まず日中関係を強固なものにして、米国との問題を解決するのが現実的プロセスだ」。民主党の山岡賢次国対委員長の14日の上海発言も、鳩山政権の外交路線に対する国際的な疑心暗鬼を生む。
 山岡発言は、従来の日米関係と日中関係を逆転させた発想であり、同盟の否定にもつながる内容を含む。鳩山政権はマニフェスト(政権公約)で対等・緊密な日米関係を目指すとしたが、山岡発言が中国の力を借りて米国とあたるとすれば、米国と対等の発想ではないし、緊密な日米関係とも両立しない。

 小沢一郎民主党幹事長が影響力を持つ鳩山政権の外交路線は、対外的には離米、対中傾斜と映る。それは成長する中国に複雑な感情を持つ東南アジア諸国にも不安を広げる。



産経新聞【主張】普天間問題 迷走のあげ句先送りとは
2009.12.16 02:51

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設問題で、政府がまとめた新たな方針は、日米合意に基づくキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)に代わる新たな移転先を明示するものではなかった。当初は最終決着の期限を5月にする考えだったようだが、社民党の反対で決まらなかった。

 鳩山政権発足以来、3カ月を迎えるのに、この問題で鳩山由紀夫首相は迷走し続け、結局、結論を先送りしたにすぎない。日米関係を傷つけ、危機的な状況にまで追い込んでいる。その責任はきわめて大きいのに、自覚すらしていないようにみえる。無責任としかいいようがない。

 米側は日米合意が「唯一、実現可能な案」との立場を崩しておらず、18日までの回答を日本に求めていた。しかも、今後の調整を与党の実務者に委ねることを盛り込んだことで、この問題の早期決着に反対してきた社民、国民新の両党の意向がより強く反映される可能性が高い。

 この結果、日米間の亀裂が拡大しているのに、こうした対応で日米関係が危機に陥る心配はないと、鳩山首相は判断しているのだろうか。日米合意の白紙化、さらに日米同盟の空洞化を避けるため、なお早期決着の道を探るべきである。

 この問題がトゲとなって、さきの日米首脳会談で合意した「日米同盟深化に向けた政府間協議」は開始できない状態にある。来年の安全保障条約改定50周年に合わせ、両国の基盤を話し合う機会を失うことになれば、日米関係は致命的な打撃を受ける。

 日本が米国から「核の傘」を含む抑止力の提供を受けていることを忘れてはならない。インド洋での海上自衛隊による補給支援は、来年1月で終了する。日本によるテロとの戦いの継続を強く求めていた米側は失望している。

 信頼関係を失えば、米側から伝えられる安全保障に関する情報も限られたものになる。同盟の空洞化がそうした形で具体化すれば日本の抑止力を低下させ、結果的に国民の生命・財産を危うくする。安全保障よりも、政党の都合や連立重視が優先されるのでは、国家としての責務を果たせない。

 現行計画は関連経費が来年度予算に計上され、選択肢として残っている。首相は決着をさらに長期化させそうな与党内協議に委ねず、自ら打開すべきである。

普天間先送り(朝日・毎日新聞社説)

普天間先送り―鳩山外交に募る不安(朝日、12月16日)

 米軍・普天間飛行場の移設問題で、鳩山内閣が方針を決めた。決着を来年に先送りし、連立3党で移設先を再検討するという。しかし、これを方針と呼べるだろうか。
 移設先の検討対象には、県外や国外ばかりでなく、自民党政権時代に合意された名護市辺野古も含まれる。移転先の結論を示す時期は明示しない。辺野古移設を前提とした経費は来年度予算案にとりあえず盛り込んでおく。

■展望欠いた政府方針

 沖縄の基地負担、日米合意の重さ、連立への配慮。どれにも応えたいという鳩山由紀夫首相の姿勢の繰り返しにすぎない。ただ結論を先延ばしするだけである。
 危険な普天間飛行場の現実を早期に変えようとすれば、選択肢は限られている。日米合意を基本に辺野古へ移設するか、本気で沖縄県外の移設地を探るかだ。加えてこの間、傷ついた日米当局間の信頼をどう回復するつもりなのか。政権の意思も方向性も見えないままである。
 政権発足から3カ月。これまでの無策と混迷がさらに続くのだろうか。

 この問題の深刻さを認識していたのかどうか、先月の東京でのオバマ米大統領との会談では「私を信頼してほしい」と語りかけた。何の成算もなしにこの言葉を発したと見られても仕方あるまい。
 半世紀以上続いてきた自民党政権から代わったのだから、従来とは違う日米関係、同盟のあり方を追求したいという首相の気持ちは理解できる。沖縄が戦後60年以上にわたって背負ってきた過重な基地負担を、歴史的な政権交代を機に軽減したいと考えるのも当然だろう。
 だが、そうであるなら、手順を踏んで現実的な政策として練り上げ、同盟国である米国の信頼と同意をとりつけていく努力が要る。そこをおろそかにしたまま、ただ「待ってくれ」「辺野古の可能性も残っている」などと優柔不断な態度を続けるのは同盟を傷つけ、ひいては日本の安全を損ないかねない危険すら感じさせる。

■同盟の重要性確認を

 政府方針に沿って、これから事態の打開を目指そうとしても、先行きは極めて険しいことを首相は認識すべきだ。そもそも再交渉するための土台となる米国との相互信頼を一から築き直さねばならない。
 対案をつくるにしても、いつまでという期限が欠かせない。しかし、来年5月までとする考え方に社民党が難色を示し、与党3党の間では合意できなかった。外交には相手があるという現実をあまりに軽く見ていないか。
 結論を先送りし、さらに日米間の交渉が長期化する可能性も大きい以上、普天間返還が「凍結」されることも覚悟する必要がある。辺野古移設とセットの海兵隊員8千人のグアム移転も進まない恐れがある。
 沖縄の現実も、いっそう厳しさを増すだろう。堂々巡りのあげく、辺野古移設の受け入れに戻ろうといっても、県外移設への期待を高めた県民の反発で代替施設の建設が順調に進むとは思えない。来年1月の名護市長選や秋の沖縄県知事選で、辺野古移設反対派が当選すれば、なおさらのことだ。
 鳩山首相に求めたいのは、普天間の移設をめぐるもつれを日米関係そのものが揺らぐような問題にさせないことだ。出発点は同盟の重要性を新政権として再確認することにある。
 日本の安全保障にとって、米国との同盟は欠かせない柱だ。在日米軍基地は日本防衛とともに、この地域の安定を保ち、潜在的な脅威を抑止する役割を担っている。
 むろん、だからといって米国の軍事的合理性だけに基づいて過重な基地負担を地元に押しつけ続けていいはずはない。最小限、どの程度の存在がどこに必要なのか、両国で協議し、納得しあわなければならない。普天間移設で問われているのは、まさにこの問題なのだ。

■大局を見失うな

 首相は、普天間の米海兵隊が担っている抑止力を、飛行場の返還後も何らかの形で補う必要はあると考えているのだろう。3年前の在日米軍再編をめぐる日米合意全体の見直しを目指しているのではなく、普天間の移設先だけの問題であることをはっきりさせるべきだ。
 米政府がこの問題で鳩山政権への不信や戸惑いを深めているのは「鳩山政権は日米同盟を本当に大事に思っているのか」という思いがぬぐえないからだろう。
 首相はかつて「常時駐留なき安保」構想を打ち出したことがある。持論の「東アジア共同体」や中国重視政策と日米の同盟関係のかかわりについても、明確な説明を欠いたままだ。
 日米が連携して取り組むべき課題は、地域の平和から核不拡散、地球環境まで幅広い。米国にとっても日本との関係が揺らいではアジア政策は成り立たない。オバマ大統領は先の東京演説で日米同盟を「繁栄と安全保障の基盤」と強調した。
 普天間をめぐるこじれで日米両政府の円滑な対話ができなくなっては大局を見失うことになる。
 事態がここまで来た以上、決着は容易ではない。首相は現実を直視して、相互信頼の再構築を急ぐべきだ。



毎日新聞・社説:基地移設の政府方針 「普天間」固定化避けよ

 与党党首級による政府の基本政策閣僚委員会は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で、移設先を決めずに先送りし、与党3党で協議機関をつくって検討することを決めた。結論を出す時期については、平野博文官房長官が「来年5月まで」との案を示したが、社民党が反対して合意できなかった。

 日米合意の沖縄県名護市辺野古への移設を含めて移設先を再検討しようというものであり、事実上の日米合意の白紙撤回ともいえる。

 ◇対米協議に全力を
 鳩山政権が発足してちょうど3カ月。鳩山由紀夫首相は「最後は私が決める」と繰り返してきた。ところが、移設先はおろか、結論を出す時期さえ決められなかった。事態は3カ月前とまったく変わっていない。「政府方針」と言うのも恥ずかしい肩すかしである。

 首相は11月の日米首脳会談で、オバマ大統領に対して「私を信用してほしい」と言明した。その結果が、期限もつけない連立内の協議では、米側も言葉がないであろう。米政府は、辺野古への移設が唯一の実現可能な案であるとの立場を変えていない。移設が暗礁に乗り上げて普天間飛行場が現状のまま固定化されることのないよう、首相は米政府との協議に全力をあげるべきだ。

 こうした事態を招いた原因は、首相のリーダーシップと、首相官邸の調整能力の欠如にある。首相はそのことを深く自覚すべきである。

 今後、連立内の協議、対米交渉を進めるにあたって注文がある。

 第一は、日米合意の考え方である。政権交代があれば、内政・外交ともに過去の政策を見直すのは当然であろう。しかし、相手のある外交では限界もある。今後の外交方針とは違って、すでに政府間の公式合意が存在する場合には「継続性」が重視される。さらに、日米合意については、国会が承認した「在沖縄海兵隊のグアム移転協定」で明文化されており、法的にも確定している。

 常識的には、政府間合意を覆す場合、相手国が納得できる新たな案を提示する義務は、合意見直しを提案する側にある。普天間の「県外・国外移設」を強く主張する社民党も、連立政権の維持を重視する首相も、この点は理解すべきである。

 普天間問題を、日米同盟全体を揺るがす発火点にしてはならない。そんな事態は、「日米同盟が日本外交の基盤」と強調する首相の本意でもないだろう。対米協議に向けて、鳩山政権はあらゆるチャンネルを使って米側に働きかける必要がある。

 第二は、普天間の固定化への懸念である。普天間移設問題の原点は、市街地にある普天間飛行場の離着陸機による騒音など生活被害の解消、米軍機墜落による周辺住民の危険性の除去である。普天間所属の米軍機事故は年平均2・2件発生し、2004年には、近接する沖縄国際大学で米軍ヘリ墜落事故が起きている。隣接する小学校が、米軍機の校内墜落を想定した全校児童の避難訓練を強いられる異常事態は、一日も早く解消しなければならない。

 移設の協議が長期化するなら、一部訓練の移転などその間の対策が必須となることは言うまでもない。

 もともと普天間閉鎖は「時間をかけて議論するテーマ」ではない。期限を設けない連立内協議が、「危険の温存」「普天間基地の固定化」につながることを強く危惧(きぐ)する。

 ◇沖縄の負担軽減こそ
 第三は、沖縄県全体の負担軽減である。日米合意通り、米海兵隊のグアム移転や沖縄の米軍6施設返還が実現しても、依然として在日米軍全体の施設面積の約70%が沖縄に集中し、基地の存在に伴う著しい負担を沖縄県民に強いる事態には変わりない。基地の縮小・移設を含めた負担軽減は、衆院選マニフェストで「在日米軍基地のあり方の見直し」を掲げた民主党政権の重要テーマの一つだ。首相は、普天間移設とあわせ、負担軽減策の実現に政治生命をかけて取り組むべきである。

 第四は、「負担軽減」と「抑止力の維持」の両立についての議論である。日米安全保障条約に基づく在日米軍基地の存在が、北朝鮮など日本周辺の脅威に対する抑止力として機能していることは、鳩山政権も認めるところであろう。しかし、その議論が政権内で十分になされているとは言い難い。在沖米軍の主力である海兵隊の存在が抑止力維持のために必要だとの議論は、米政府よりも外務、防衛両省を中心に日本政府側に強いとの指摘もある。

 海兵隊を含めた在日米軍基地の存在による抑止力の中身と、今後のあり方について鳩山政権が明確な考えを固める必要がある。そうでなければ、米側との実質的な協議は進まず、すれ違いに終わりかねない。

 繰り返すが、今回の「政府方針」の内容では、何も決めなかったに等しい。このままでは連立内の協議もどこまで真剣に行われるか疑問である。少なくとも結論を得る時期を明確にしたうえで、3党間でただちに協議を開始すべきだ。鳩山首相の指導力を改めて求める。

2009年12月15日

政権構想会議の「第二次勧告」

 自民党・政権構想会議の「第二次勧告」全文を掲載します。

第 二 次 勧 告
21.12.15
政権構想会議

 下記のとおり、執行部に対し第二次勧告を行う。執行部はこの方針を党議決定し、党綱領や党規約の修正を必要と判断した場合は、所要の作業に着手し、次期党大会で党員の承認を得て、新生自民党の姿を国民に訴えられたい。
 また、政策の企画立案にあたっては、この勧告の精神を基本に調整にあたるとともに、国会対策、広報、党の運営についても、この方針を党の方針として政務の執行にあたり、わが党の新しい姿が国民に理解されるよう、総裁は先頭に立ち、党員が一致協力し、ひたむきに努力する雰囲気創りが肝要である。
 特に、党組織の根幹をなす地方組織、職域組織の充分な理解のうえに実務を執行するため、党議決定後、執行部と当会議合同で各地におもむき、意見交換を重ねることが肝要である。報道への対応についても、関係役員・所属議員の充分な理解と意見統一のもとに対応されたい。

 記

1.自由と民主の下に新しい旗を
 昭和30年(1955年)、東西対立の国際情勢のなか、左右社会党の合同に危機感を抱いた、自由主義と民主制を標榜する自由党と民主党が合流し、我が党が誕生した。爾来、綱領に明らかなように、我が党は反共産・社会主義、反統制・独裁制の自由主義、民主制を党是として、日本の平和と繁栄に国民とともに努力してきた。
 平成元年(1989年)のベルリンの壁の崩壊、平成3年(1991年)のソ連邦の解体により、我が党の立党目的の一部は達成されたといって良い。しかし、現在の日本政治には、なお社会主義的政策や統制的統治の残滓が多い。旧社会党の綱領を否定し、社会主義を放棄したうえで民主党に参加したか否かが明確でない議員が多数いるためか、民主党にはどのような政治理念で国民に奉仕するかの綱領、即ち政党の憲法が存在しない。国民生活の各分野への政府の判断による国民総生産の恒久的な直接給付。一度の投票で有権者に全ての判断を委任されたとの思い込みによる、「政治主導」という言葉の下での中央統制的な意思決定。このような国家社会主義的政党とは闘わねばならず、自由と民主はなお大切な価値として、我が党はこれを護りぬかねばならない。
 我が党成立のもう一つの目的は、唯物論的社会主義を否定し、人間の価値を尊重する保守主義の理念により、「日本らしい日本」の建設にあった。保守主義とは、人間の良心、矜持に期待する行動規範である。当然の結果として、保守主義は一人の判断より多数の判断、一時期の熱情より時代を超えて積みあげられてきた良き伝統、規範、秩序を大切にする。時代に適さぬものは改め、秩序のなかに進歩を求める。「日本らしい日本」建設の象徴が、我が党の党是となっている新憲法の制定であった。
 総選挙の敗北の反省のうえに、我が党は政治理念として、自由と民主の下に正しい日本の保守の旗を立てねばならない。この旗の下、社会主義への祖先かえりと対峙し、政府の国民生活への過剰な介入を認めない。我が党は常に現在と将来の汗を流す納税者の立場に立ち、政策の運営にあたる。
 
2.我が党の政治姿勢
(イ)謙虚に、勇気をもって真実を語る姿勢
(ロ)自由な党風、正しい政治決断によるスピード感ある意思決定
(ハ)国益・公益に適う多様な組織との対話・意見調整
(ニ)国会の公正な運営、内閣の謙虚な機能

3.政治理念・政策の基本
(1)品性ある国民、品格ある日本
(イ)頑張れるものは頑張る(自助・自立した個人)
(ロ)それでもだめなら皆で助ける(公助と共助)
(ハ)自律と秩序ある市場経済

(ニ)地域社会と家族の絆の再生
(ホ)「和」のこころや「温かさ」の回復と共生

(2)不必要なことをせぬ政府
(イ)自分だけ良ければ良いのではない(人の税を当てにしない)
(ロ)今だけ良ければ良いのではない (次世代の税には頼らない・均衡財政)
(ハ)自助、共助、公助の条件づくり(すべての人への政策) 
   外交・安全保障、成長戦略、雇用対策、教育、環境保全、
   社会保障等共同体のセーフティネット
              

(3)憲法改正
(イ)日本型保守の価値観を基本に、時代の変化に対応する憲法
(ロ)人類の新たな目標、国際社会に貢献する憲法
(ハ)権利と義務のバランス、地方自治を明確にする憲法


4.品格と活力あふれる日本――我が党の目指す将来の日本像
_搬押地域社会、国への帰属意識を持ち、自立し、共助する国民
美しい自然、温かい人間関係、「和と絆」の暮し
9膂娵狙を怠らぬ民主制で意思決定される国と自治体
づ慘呂垢襪發里報われ、努力する機会と能力に恵まれぬものを皆で支える社会。その条件整備に力を注ぐ政府
ド塢要なことをせぬ政府。次世代の意思決定を損なわぬ均衡財政
人類共通の価値に貢献する有徳の日本。平和な日本

shige_tamura at 18:31|PermalinkComments(2)TrackBack(0)clip!自由民主党 

天皇陛下の政治利用、学者の見解

 今回の天皇陛下の政治利用について国学院大学教授・大原康男と小林節慶応大数授の2人の学者の見解を掲載する。
 
【正論】国学院大学教授・大原康男 卑屈な政治的配慮を憂慮する
(産経新聞.12.15より)

 ≪政治利用のルール破り明白≫

 天皇陛下のご即位20年を盛大にお祝いした感激の余韻がまだ脳裏に残っている中で、あの日からちょうど1カ月たった12月12日の朝刊各紙は、天皇陛下が中国の習近平国家副主席と15日に会見されることを1面で大きく報じた。

 なぜそんな扱いになったのか。それは外国の賓客が天皇陛下と会見する場合、通常は1カ月前までに文書で正式に申請するという「1カ月ルール」と呼ばれる慣例があるにもかかわらず、今回の中国政府による要請は11月下旬でありながら、鳩山由紀夫首相が「特例」としてその実現を強く指示したため、天皇の「政治利用」に当たるのではないかとの批判がにわかに巻き起こったからである。

 各紙の報道からことの経緯をもう少し詳しく追ってみると−この「1カ月ルール」はご高齢で多忙な陛下の日程調整を円滑に行うため、平成7年ごろから存在し、爾来(じらい)、政府においても厳守されてきたため、外務省もこれを理由として「応じかねる」とした宮内庁の回答に従ってこの要請を断ったが、鳩山首相は平野博文官房長官に事態を打開するよう指示、これを受けて平野長官は2度にわたって宮内庁に会見実現を執拗(しつよう)に求めたという。

 これに対して、羽毛田信吾宮内庁長官は「ぜひルールを尊重してほしい」と要望したものの、最終的には「総理の指示を受けての要請だ」との官邸の圧力に「行政機関の一員として従わざるを得なかった」として、「苦渋の思い」で受け入れたとのこと。

 ≪首相の政治感覚に驚く≫

 この決定を公表した11日の記者会見において、羽毛田長官は「大変異例だが、陛下にお願いした」苦衷(くちゅう)を漏らし、併せて「大きく言えば陛下の政治利用ということ」とも述べ、まさしく「異例」の政府批判を行ったが、対する鳩山首相は「諸外国と日本の関係をより好転させるための話であり、政治利用という言葉は当たらない」とうそぶいた。鳩山首相の強硬な姿勢の背後には小沢一郎幹事長からの要請があったことは各紙ともほぼ共通している。

 何よりも驚くべきことは、鳩山首相の政治感覚である。いわゆる“皇室外交”は、憲法上「国政に関する権能を有しない」天皇(および皇族)によって「現実の国際政治の次元を超えたところでなされる友好と親善」でなければならない。

 しかるに、今回の“特例的会見”はそうではない。他国にはルールを守らせながら、中国に対してだけはその無理強いを唯々諾々(いいだくだく)と受け入れたという卑屈な政治的配慮、その結果、胡錦濤国家主席の最有力後継者候補とされる習副主席(中国国内には反対者もいる)に対して、天皇との会見というきわめて有利な実績を与えるという政治的効果、これがどうして天皇の「政治利用」にならないといえるのであろうか。

 かつて本欄でも触れたが、国論を二分しながら、強行された平成4年の天皇皇后両陛下のご訪中は、中国が天安門事件による孤立化の打破を狙った天皇の「政治利用」であり、その事実を当時の銭其r外相が回顧録で暴露したことをあらためて想起する。そのことに対する反省が全く見られないことに深い憤りを禁じ得ない。

 ≪羽毛田長官の対応にも不満≫

 そればかりではない。民主党の皇室に対する対応には問題とすべき点が少なくない。たとえば、岡田克也外相は国会開会式における天皇のお言葉の見直しに言及して物議をかもしたし、鳩山首相は国立戦没者追悼施設を推進する理由として陛下が靖国参拝をなされていないことを挙げるという詭弁(きべん)を弄(ろう)した。とりわけ、あのご即位20年を奉祝するために11月12日を臨時の祝日にするという超党派の議員連盟による立法化を葬ったのは民主党ではなかったか。皇室への無理解と冷淡さがある一方で、身勝手な「政治利用」を容認する−これが民主党の皇室観なのだ。

 一方、羽毛田長官の対応にも不満がある。長官は「こうしたことは二度とあってほしくないというのが私の切なる願いだ」と訴えたが、一度破られたルールならば、それが再び繰り返されることは十分予測できよう。

 たしかに、宮内庁は「内閣総理大臣の管理」に属するので、その苦しい立場に同情すべき点はあるが、本件は「現憲法下の天皇のお務めのあり方や役割といった基本的なことがらにかかわる」という深刻な危機感を覚えたのであれば、泣き言や政府批判を吐くにとどまらず、辞表を懐に職を賭しても断固拒否すべきではなかったか。そうすれば、また違った展望が開けたかもしれない。

 もう一つ、現政権が発足する直前の9月10日に羽毛田長官は早々と「皇位継承の問題があることを(新内閣に)伝え、対処していただく必要がある」と述べた。長官は女系天皇を容認していると伝えられるが、こんな体たらくの鳩山政権に皇室典範改定のような重要なことがらを託することができるのか、その見識をあらためて検証したい。(おおはら やすお)




政治利用は明らか(12月12日、新潟日報より)

 小林節慶応大数授(憲法)


 中国側に政治的な意図があるはずで、それを分かつた上で(特例措置で)天皇との会見を設定したのだから、政治利用に当たるのは明らかだ。外交は政治家の仕事であって、過去の戦争を考えれば、もっと慎重に対応すべきだった。天皇は日本の象徴であり、政治的に利用してはならない存在だ。中国側に言われるままに無防備に要求に応じた政府・民主党の姿勢は勇気に欠ける。

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